おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
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「パワー・レンジャー」(Power Rangers, 17)

 日本起源の米ヒーローTVシリーズ映画化第2弾。95年の第1弾は封切りの時に東映系の劇場で観た切りだが、ずいぶんと子供っぽい内容だった(まあ、当然だが)記憶がある。

 今回は子供向けというよりは、テレビでパワーレンジャーを観ながら育ったティーンの観客に焦点を合わせた印象がある。

 予告編を観て「クロニクル」をやるのかなあ、と思っていたら、アウトサイダーの若者たちが「居残り」させられて絆を育んでいくという、ずばり懐かしの「ブレックファスト・クラブ」(85)でした。この作品は、ぼくの生涯のベストテン、と言っては大げさかもしれないが、ベスト・トゥエンティには入る作品なので、それだけで「パワーレンジャー」への評価も甘くなってしまう。

 ネットいじめの問題が扱われていたり、五人の中にバイセクシュアルらしき少女がいたり、自閉症スペクトラムの少年がいるなど、人種的にも性格的にも多様性に富んだ布陣となっていて、この五人が最終的に心を通わせて変身(モーフィング)に成功するまでに、たっぷりと尺を取っている。それゆえ上映時間も2時間越え。

 しかし、青春映画としての内容がしっかりしているので、変身まで退屈させられることもない。
 青春ものとしての要素が強くなりすぎて、何を観に来たんだっけか?という感じになると、敵キャラのエリザベス・バンクスが、ちらちらと顔を見せて脅威を振りまいてくれるからである。

 バンクスが演じているリタは、本家日本の戦隊ものでは失われてしまった美しき伝統(露出度の高いコスチュームに身を包んだ悪女)を守ってくれている。有難いことである。この人は芝居がくどくなりがちなのだが、この役にはちょうど合っている。

 レンジャーズを演じている五人の若手の中に、これは名前を覚えておかねば!と思った人は、今のところ一人もいないのだが、誰か一人でもこれから化けないとは限らない。

 本格的にアクションはクライマックスに集約されているが、「トランスフォーマー」のように、ひたすら見せ場を繋いでいくような特撮作品には正直飽き飽きしているので、これはこれで新鮮だった。「バンプルビー、ごめん!」には笑った。

 傑作だとか必見だとか言うつもりはないが、ぼくはこの作品をかなり楽しんだ。

 続編でグリーンが加わるところを、ぜひ観たいです。




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 最新号。連載はバッド・ベティカーとイーストウッドのこと、その1。


キネマ旬報 2017年8月上旬号 No.1752

キネマ旬報社 (2017-07-20)


# by broncobilly | 2017-07-20 05:59 | 映画評

本日発売

 本日発売です。2012年から昨16年までの外国映画ベストテン時代
のコラムを書かせてもらいました。



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# by broncobilly | 2017-07-12 07:14 | PR

「ラプチャー 破裂」(Rupture, 16)

 シングル・マザーのノオミ・ラパスが、ある日突然拉致される。連れて行かれた場所では、謎の組織が被験者たちを極端な恐怖にさらすことで「破裂」させることを目指しているらしい。

 「セクレタリー」が、ちょっと面白く、「毛皮のエロス/ダイアン・アーバス幻想のポートレイト」が、ちょっと心に残ったスティーヴンシャインバーグの原案/監督なので、ちよっと期待したのだが、前期に作に通じる奇妙な味はあるものの、これはいけませんでした。

 ほぼ全編が一人称になっている。と言って、POVというわけではなく、ヒロインがいる場所にカメラがあり、ヒロインに与えられる情報だけが観客にも与えられるという意味での一人称である。でありながら、最初の方でサスペンスを盛り上げるために、ヒロインを観察する何者かの視点が入ってきたりと統一が取れていない。

 秘密施設に連れてこられたヒロインが簡単に縛めを解いて、建物内部をうろうろと歩き回ってなんやかんやと目撃する辺りに一番尺を取っているのだが、この間、発見されるかどうかのサスペンスを全く盛り上げようとしないのはいかがなものか。実はそのことについては、後にとって付けたような説明があるのだが、それにしても、ただ動き回って目撃するだけでは間が持たない。第一、ヒロインが施設から本気で脱出するつもりがなさそうなのが不可解である。

 謎の組織の正体や目的については、一応説明らしきものがあるにはあるのだが、それでもやっぱり不得要領。

 もちろん、何から何まで説明する必要はないのだが、観客に背後にあるものをいろいろと想像させて怖がらせなくてはいけない。この作品は、前述のようになんやかんやとガタピシしているので、観客の想像力を刺激、というよりは、作り手側に自身の想像力をもっと刺激して欲しかったと望んでしまいました。

 ラパスは熱演しているが、組織側のピーター・ストーメアとマイケル・チクリスは、ギャラの分だけ仕事をしてさっさと帰りたいという風情だった。

 ポンコツぶりに呆れる、ということ自体楽しかったので、入場料分の価値はあった!と自分に言い聞かせています。




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# by broncobilly | 2017-07-11 06:32 | 映画評

「ライフ」(Life, 17)

 この文章を書いている7月3日の時点でIMDbでの「ライフ」の評価は6.7点と、可もなし不可もなしといった感じだが、いっぽうユーザー・レヴューズの方は大荒れで、「いささかでも常識が残っていれば、耐えられないはずの作品」だとか「知性に対する侮辱」とか「死ぬほど退屈」、「金返せ!」などなどのコメントの数々が躍っている。

 「ライフ」を、退屈などせず、けっこう楽しんでしまったぼくには、もはや常識が残されていないし、知性のかけらもないということだろう。入場料金返してほしいとも思わなかったし。

 そもそもジェイク・ギレンホール、レベッカ・ファーガソン、ライアン・レイノルズが顔を揃えた、大作のSF映画だと思うからいけないのであって、これは宇宙を舞台にした邪劇である。

 あきらかに「ライフ」のもとになっている「エイリアン」は、あの作品が作られた時代のフェミニズムの台頭と、それに対するバックラッシュが、物語のバックボーンとなっていて、それによって傑作になったのだということは、今や映画史の常識と言ってもいい。

 「ライフ」には、そういうものは綺麗さっぱり存在しない。乗組員たちはみんな仲良しで、そもそも宇宙ステーションの司令官は最初から女性である。

 いかなる社会的/哲学的テーマも皆無。恐いなあ、凄いなあ、とポップコーン片手に楽しむ作品と割り切れば、レット・リースとポール・ワーニックが書いた脚本も、ダニエル・エスピノーサの演出も、すこぶる快調と言っていいのではないか。

 豪華な出演者たちに幻惑されて、過大な期待をしてはいけないのである。
 堂々たる熱演を披露している真田広之だって、「サンシャイン2057」という哲学SFより遙か昔に、酷いけど楽しい「宇宙からのメッセージ」に出ていたもんな。むしろ、そっちのノリで楽しむべき。

 一つ一つの恐怖場面に力が入っていて、楽しかったのだが、とくに気に入ったのがクライマックスから結末にかけての展開で、酷すぎて笑った。酷すぎると言っても、これは明らかに最初から狙ったもので、「デッド・プール」の脚本家らしいブラック・ユーモアが炸裂している。

 以上、知性と常識に欠ける評者によるレヴューでした。



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# by broncobilly | 2017-07-09 09:00 | 映画評

「ジョン・ウィック:チャプター2」(John Wick: Chapter 2, 17)

 引退していた伝説の殺し屋ジョン・ウィックが、かつて交わしていた誓約のために最後の仕事を引き受けざるを得なくなるが、依頼人に裏切られ巨額の賞金をかけられたため、自身が殺し屋たちの標的となってしまう。

 すでに公開された、アメリカ国内での評判がすこぶるよく、興行も好調だったようなので、前作と比べて悪くはないだろうと期待していたのが、率直に書くと、予想を遙かに上回る出来。ここまでやるとは思っていなかった。

 愛車を取り戻すために、前作のラスボスの兄ピーター・ストーメアのところへと殴り込むエピソードからスタート。このシークエンスから(文字通り)アクセル全開なので、楽しませてもらいながらも、この調子で全編引っ張ってしまうと、アクションそのものに飽きてしまうのではないかといささか心配になってくる。

 そのあと、ローマに渡り、暗殺を実行するまではいくぶんテンポは落ちるのだが、決してつまらないということはない。暗殺の標的となるクラウディア・ジェリーニとの最後のやりとりなど奇妙な味がある。

 なんと言っても、ウレシクなってしまうのは、ローマの殺し屋ホテルのオーナーとしてフランコ・ネロが登場すること。実に渋くてカッコイイ。「ジャンゴ:繋がれざる者」を観たときには、ゲスト出演させるなら、もっとちゃんとした役で出せよタランティーノ!と思ってしまったのだが、この作品でのネロは実にいい。けっこう出番もあるし。

 さて、ウィックが追われる立場になると、前作を更にパワーアップさせたアクション場面のつるべ打ちとなるわけだが、ローマでは史跡や古い街並みを背景に、ニューヨークでは地下鉄列車内や駅で、クライマックスは「上海から来た女」、「燃えよドラゴン」ばりに、とアクションの舞台がそれぞれ違うので、基本的には同じことを繰り返していても、一本調子にならないのがありがたいところである。

 要所要所ではスタントダブルを使っているのだろうが、それにしてもキアヌはよく動く。

 前作に続いて登場のイアン・マクシェーンもますます貫禄がまして物語を引き締めている。ローレンス・フィッシュバーンの役も面白い。

 今回は続編ありきの作り方で、なにせウィック君は雑魚敵たちの命は容赦なく絶っていくのに、強敵はなぜか見逃すんだよねえ。

 それでも、あざといなあ、と呆れてしまうよりも、むしろ喜ばしく感じてしまうのは、たっぷりと楽しませてもらったからである。

 第三章、お待ちしております。

 

 

ポスター/スチール 写真 A4 パターン10 ジョン・ウィック チャプター2(原題) 光沢プリント

# by broncobilly | 2017-07-07 14:46 | 映画評