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映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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GALACTICA:スピンオフ【BLOOD&CHROME/最高機密指令】

 70年代後半、「スター・ウォーズ」の超大ヒットに影響されて作られたテレビ・シリーズが「宇宙空母ギャラクティカ」(Battlestar Galactica)。日本でも再編集の劇場版がセンサラウンド方式で公開されたり(ぼくが住んでいた神奈川の劇場では通常形式で上映)、テレビシリーズが非常に半端な形で放送されたりした。どちらも観たのだが、当時の感想としては特撮はがんばっていたけれど、内容はお子様向け。むしろ「ギャラクティカ」が2シーズンでキャンセルになった(短命に終わった続編もある)後に同じプロデューサーが始めた「キャプテン・ロジャース」の方が、お子様向けに徹した直球勝負で面白かった記憶がある。

 というわけで03年にBattlestar Galacticaのリブートが始まると知っても、それほど嬉しくはなかったのだが、パイロット・フィルム「バトルスター・ギャラクティカ サイロンの攻撃」のDVDをレンタルしてすっかりコーフンしてしまった。

 まず、世界観が素晴らしい。ギャラクティカは老朽艦という設定で、銃は光線銃ではなくて弾丸の出るもの。艦内の電話などは実際に現在の軍で使われていたものをリサイクルして使っているという。無理に"未来"っぼくしようとしていないので、リアリティがあるのだ。


 宇宙空間でのドッグファイトも、オールC.G.I.なのだが、非常にスピーディで、和太鼓の不気味な音楽も相まってとても迫力がある。

 なによりも、登場人物たちが画に描いたようなヒーローではなく、それぞれ強さも弱さも持ち等身大の血の通った人間になっている。

 あまりに感心したので、シリーズが始まってからは、毎年シリーズごとのDVDボックスセットをアメリカから取り寄せて観ていた。4シーズン全部観たが、CSに加入してからは吹き替え版で最初からまた観直してしまい、やっぱりとても面白かった。

 人類に作られ、反旗を翻した機械生命体サイロンによって募星を滅ぼされた人類の生き残りが、新たな出発の地となる伝説の星"地球"を、船団を組んで目指す中、あくまでも人類殲滅を図るサイロンが追う、という図式は旧シリーズと同じながら、リブート版ではサイロンが進化して人とほとんど変わらない、ひょっとすると全く変わらない生命体となって、ギャラクティカのクルーの中に紛れ込んでいたりする。もちろん、旧シリーズで人気のあった機会型、通称"トースター"(「アルゴ」に特別出演してましたね)も新デザインで登場。これによって「ブレードランナー」的な、人とは何か?人と人でないものを分かつものは何なのか?という哲学的命題が全編を貫くテーマとなる。

 他にも、宗教、政治、戦争、犯罪、セックス、などのテーマがSFだからこその思考実験として、ストレート・ドラマよりもリアルに描かれていた。質の高さとしては、ぼくがこれまで観てきたアメリカのテレビ・シリーズの中で最高だと思う。個人的には「スタートレック」、「スター・トレック/ザ・ネクスト・ジェネレーション」を越えたと思っている。

 艦内での日常生活の描写も秀逸で、「白昼の死角」、「復活の日」と2本の邦画に出演し、レギュラー出演していた「マイアミ・バイス」では、"BUSHIDO"(「二重スパイ抹殺指令!暗躍・フロリダ国際諜報戦!!」)というタイトルのエピソードを監督して日本刀を振り回していたエドワード・ジェームズ・オルモス(アダマ艦長)が、ギャラクティカの艦長室で、うどんを啜っている場面なんて、ミョーな生活感があってよかった。

 「バトルスター・ギャラクティカ」が4シーズンで見事に(打ち切りではなく)完結したのち、"サイロン戦争"の発端を描くシリーズ「カプリカ」がはじまったが、これはワン・シーズンで打ち切り。それでも「バトルスター・ギャラクティカ」をもっと観たいというファンからの声は大きく、第一次サイロン戦争(シリーズで描かれるのは第二次)での若き日のウィリアム・アダマの初陣を描く作品が作られた。それが「バトルスター・ギャラクティカ/ブラッド・アンド・クローム」である。

 血気にはやる新任パイロット、アダマ。彼は最新鋭戦闘機"ヴァイパー"での戦闘を望んでいるが、彼とベテラン副操縦士"コーカー"に与えられた任務は、女性科学者ケリーを、ある地点まで送り届けるというものだった。だが任務が始まってみると、ケリーから新たな目的地が伝えられ。サイロン戦闘機からの追撃を逃れて辿り着いたそこには、戦闘によって失われたはずの人類側戦艦が集結していた・・・。

 もともとはウェビソードとして企画されたものということで、出演者にも知った顔はなく、いかにも低予算。ブルーレイで観たせいか、戦闘場面などC.G.I.がテレビシリーズのときよりも、さらにアニメっぽく感じられてしまう。だが見せ方のセンスの良さはテレビシリーズのときと変わっていないので、やはり面白い。役者さんたちは多くの場面でなにもないか、ほんの少しの小道具しか置かれていないスタジオのスクリーンの前で演技をしているはずなのだが、演技はとても自然。このあたりで「GARO/蒼哭ノ魔竜」を思い出して、うーむ、となってしまう。

 とある惑星に着いたところで怪獣に襲われる。「バトルスター・ギャラクティカ」の素晴らしさの一つは、宇宙人とか宇宙怪獣とかを一切出さずに、人類とサイロンだけで4シーズン見せきった点にあったので、ちょっとがっりしたが、これは機械生命体のサイロンが有機生命体に進化するための実験の過程で生じたものだと説明されてほっとした。

 テレビシリーズ同様のハードな世界観、人間観、ストーリー展開で一気に見せる。アダマ役のルーク・パスカリーノはもまだコワイ顔ではなかった若き日のエリック・ロバーツをさらに甘くしたようなマスクで、人気が出そうだなと思ったらイギリス製のテレビシリーズ「三銃士」でダルタニアンを演じることが決定した模様。

 どうやらシリーズ化はされないようだが(いかにもされそうなラストなんだけどね)、これで「バトルスター・ギャラクティカ」ワールドが終わりということはないだろう。映画の話も何度か浮上しては消えているようだが、実現するとしたらリブートではなくて、21世紀版の世界観を踏襲して欲しいものである。



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 値段高過ぎ。大手のレンタル・ショップで借りた方がいいですね。

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 輸入盤なら全シーズンでこの金額なのに。

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 "BUSHIDO"はこれに収録されてます。レンタルもされてるはず。

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by broncobilly | 2013-03-08 08:15 | 雑記
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