おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「ザ・ホスト 美しき侵略者」(The Host, 13)

 しょっちゅう映画館に通っていて、あまり人の入っていなさそうな作品にも嬉々として(?)でかけるので、いわゆる"閑古鳥の鳴いている"場内で鑑賞することは珍しくない、というか、日常茶飯事なのだが、それでも"ぼっち"になることは、ありそうでない。あー、今日は一人で鑑賞かなあ、(最終回の時などは)おれがいなきゃ店仕舞いできるのに申し訳ないなあ、などと思っていると、予告編など始まってから、パラバラと2、3人入場してきたりして、ほっとしたり、なぜかちょっと残念になったりする、というのがほとんどである。

 ところがですね、昨日、数年ぶりに"ぼっち"鑑賞してしまいました。平日の夕方だったとは言え、そんなに需要ないのかよ「ザ・ホスト 美しき侵略者」! 

 まあ確かに「ザ・ホスト」と同じくステファニー・メイヤーズ原作の「トワイライト・サーガ」だって、日本では大人気というわけではなかったけど、それでも新作が公開されるたびに気が進まぬままに出かけた劇場には、シリーズのファンらしい若い女性の姿がちらほらと見られた。まあ、でも「ザ・ホスト」はアメリカ本国でも批評的、興行的に惨敗したもんなあ、などと思いつつ、「トワイライト」みたいに、肉食系男子と吸血系男子に愛されたヒロインが「私のために喧嘩しないで!」とか、ヒロインと吸血系男子が結ばれて肉食系男子はどうするんだろうと思ったら、ヒロインと吸血系男子の間に生まれた娘に一目惚れ!とか、せめて"ネタ"で笑わせてもらえればなあ、と気乗り薄で鑑賞を始めた。

 はい、面白かったです。素直に楽しんでしまいました。

 宇宙からの侵略者"ソウル"たちが人間の肉体に取り憑いて世界を支配する。レジスタンスの少女メラニー(シアーシャ・ローナン)もワンダラーと呼ばれる"ソウル"に憑依されるが、"とても強かった"ので(←この辺りの理由づけはいい加減)意識が残り、一つの肉体に二つの精神が宿ることになる。

 とまあ、ちょっと「寄生獣」を思わせる設定。

 弟や恋人を探しに行ってウィリアム・ハートが率いるレジスタンスのアジトに辿り着くと、メラニーに惚れている恋人とワンダラー(ワンダと呼ばれるようになる)に惚れる青年が登場し、いかにもメイヤーらしい三角(四角?)関係となる。

 予告編だとアクション場面がフィーチャーされて、冒険SFとして売っているのだが、実際は違う。違うのでほっとした。監督/脚色のアンドリュー・ニコルが追っかけサスペンス/アクションに向いていないということは、あのつまらなかった「TIME/タイム」で証明済みですからね。

 SF的な設定の中で、人間ドラマをじっくりと展開する方がニコルには向いていると思う。

 ヒロインがレジスタンスのアジトに辿り着いてからは、ヒロインの体の中の二つの精神の葛藤とか、二人の男性との関係とか、弟と再会のドラマとかが、盛りだくさんで展開される。盛りだくさんだと思ったら、三部作の原作小説を一つにまとめて映画化しているのですね。派手なアクションとか特撮を期待するか、この辺りのドラマを楽しむかで、この作品に対する評価は変わってくると思う。ぼくに関して言えば、「ガタカ」に並ぶと言っては褒めすぎだけど、久々にニコルらしい作品だなあ、と嬉しくなった。

 ヒロインを演じるローナンには大人ぽい魅力が出て来た。ウィリアム・ハート
はさすがの貫禄で若手中心の出演陣をがっちりとまとめている。
 ラスト近く、最近封切られたつまらない作品でヒロインを演じていた女優さんが、ひょっこりと顔を出します。

 ロベルト・シェイファーのカメラが捉えたニューメキシコ砂漠地帯の映像がとても美しい。この映像がいいなあ、と思ったから、ドラマの方にも自然に引き込まれたのだと思う。赤茶けた砂漠を飛ぶメタリックのヘリコプターの"画"を魅力的に感じることがなければ、「トワイライト」シリーズを見ていた時のように、突っ込みどころを探すイジワルな見方をしていただろう。

 終わり方もとてもきれいに纏まっていて、すっきりとした気分で(一人で)劇場を後にした。拾いものをした気分であった。





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by broncobilly | 2014-06-17 07:22 | 映画評
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