おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「ソウ6」 SAW VI (09)

 大人気シリーズの第六作目、と書きたいところだが(書いてしまったが)、米本国ではまさかの大コケ。話題の「パラノーマル・アクティヴィティ」に負けたのは仕方ないにしても、とても評判の悪いリメイク版「ステップファーザー」にさえ興行収入が及ばない。よほどつまらないのかなあ、と思ってIMDbをチェックしたら、シリーズのファンからの評価はかなり高い。自分の目で確かめるために行ってきましたよ、浜松まで。そうです。静岡から浜松まで遙々行ってきました。やってないんだもん、市内では・・・・。
 で、それだけの価値はあったかというと・・・、あった。でも、大コケの理由もわかる。
 まず冒頭に、これは日本だけだろうが、一見さんのために、これまでの総集編が流れる。ところが、これが見事なまでに役立たず。これを観たからと言って、シリーズに馴染みのない人が「SAW6」を観て内容が理解できるということは絶対にない。今まで「SAW」を観たことのない人は、総集編はあてにせずに、ちゃんと1から5まで鑑賞してから出かけるように。
 二作目以降お馴染みの、冒頭のゲーム。今回のターゲットは、サブプライム・ローンでボロ儲けしたらしき金融業者二人が、金貸しらしく『ベニスの商人』を思わせる試練に。いつも思うのだが、ジグソウもその後継者も、考えられないほどの知恵と金と手間をかけてトラップを作っている。これだけのエネルギーがあるのなら人殺しではなくて、例えば命の尊さや人生の大切さを教えることに使えばいいのになあ、と感じてしまう。あっ、使ってるのか。
 メインのトラップの犠牲となるのは、保険金を払わないためにあの手この手を尽くす保険会社重役。金融やら保険やら、今回はマイケル・ムーアが狂喜しそうな内容である。
 ぼくは数年前に大けがをしてから、映画の観方が変わってしまった。それまでは本当の苦痛を味わったり、自分の肉体を大きく破損したり、体にメスが入ったりしたことが一度もなかった。ホラー映画などで骨折や切断を観ても、ショックを受けつつ、実は何も感じていなかった。怪我と手術以降は、肉体が切り取られたり、骨が折れたりという描写には、実際に身がすくみ、身が縮み、心臓が締め付けられるようにようになってしまった。「SAW6」の場合も、劇場の一番後の端の席に座って、他の観客達からは離れたところで「ほげげ」とか「うがが」とかの声が出そうになるのを必死で抑えつつ、身悶えしながら見物していた。
 なぜこんな思いをしながら観ているのかというと、「SAW」シリーズのクライマックスにいつも用意されている、謎解きとどんでん返しが一緒になったモンタージュ/フラッシュバックの目眩くような快感を味わいたいからである。一作目はもちろん、二、三、四作目でも、この快感をたっぷりと味わえた。だが、五作目はシナリオが少々雑で快感が薄かった。
 六作目は前作よりも、脚本はしっかりとしている。これまでの作品とのつな繋がらせ方も巧みである。だが、いかんせん、驚かせ方の手が尽きたようだ。どんでん返しのパターンが過去の繰り返しなのだ。だから、XXは△△だと思ったら、なんと○○だった!という仕掛けに存分びっくりできなかったのである。
 作品としての質は五作目を上回っているのだが、シリーズそのものの命脈が尽きかけていることを感じさせてしまう。このあたりがあちらでの興行的失敗につながっているような気がしてならない。
 などと書きつつも、やっぱりあのラストは先が気になるし、七作目も(必要があれば)遠出してでも観に出かけるだろう。
 ぼくはまだジグソウの罠から抜け出せずにいるのだ。

by broncobilly | 2009-11-07 08:28 | 映画評
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