おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「クロユリ団地」(13)

 「リング」でJホラー・ブーム立役者の一人となった中田秀夫監督による新作ホラーである。

 老朽化が進むクロユリ団地に引っ越してきた女子大生、明日香(前田敦子)が遭遇する恐怖を描いている。

 ヒロインの家族の謎めいた描写、隣室の老人の謎、明日香に懐いてくる少年、と三本のストーリーラインが並列して描かれる前半はどうにもスッキリしない。ホラー映画で"スッキリ"というのも変だが、恐怖の焦点が絞れていないのである。だが、三つのラインのうち二つは中盤までに一応の決着が付けられ、それ以降は最後のストーリーラインを補完するための要素となる。

 日本映画には良くあることだが登場するキャラクターの背景をセリフや場面で延々と説明しすぎるということを、「クロユリ団地」でもやっている。明日香を助けようとする青年、笹原(成宮寛貴)のサイドストーリーなどにもセリフと尺を相当使っている。これもまたクライマックスで効果を上げる要素とはなるのだが、観客を信用してもう少し簡略化できなかったものかとも思う。

 とまあ、文句を付けつつも終盤になると、手練れの中田監督さすがに盛り上げてくれる。このあたりになると、魔性のものが主人公をこちらの世界からあちらの世界へ連れ去ろうとするのをいかに防ぐか、という三遊亭円朝作『牡丹灯籠』中の「お札はがし」などでお馴染みの、古典的怪談の世界がきちんと現出してくるのである。中田監督が円朝作『真系累ケ淵』の世界に現代的な感覚を導入しようとした「怪談」は成功作とは言えなかった。中田監督は「リング」がそうであったように、現代的な意匠で日本の古典的怪談の特徴である"因果"を描く方が向いているのだと思う。

 前田敦子は特に前半、芝居を意識しすぎてつまらない。このくらいの年の女優なら最初のうちはもっとのびのびと演じた方が良い。そして徐々に異常性を出してゆく。その方がクロユリ団地、そしてこのキャラの持つ闇が徐々に浮かび上がってくることになって恐怖が増したはずだ。

 ラストのサゲにももう一ひねりほしいところ。

 でも、ぼくはホラー映画も円朝も好きなので、この手の作品は時々見せてほしいと思う。





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by broncobilly | 2013-05-26 14:35 | 映画評
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