おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
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「コン・ティキ」(Kon-Tiki, 12)

 1947年、自説を証明するために古代の筏"コン・ティキ"を再現して太平洋横断に挑んだノルウェー人学者/冒険家トー・ヘイエルダールの物語。

 コン・ティキという名は聞いたことはあったが、原作となった冒険記は読んでいないし、アカデミー賞を受賞したという記録映画も観ていない。ほぼ白紙の状態で作品に対峙したのだが、とても面白かったし、感動もさせられた。

 主人公の向こう見ずだった少年時代から始まり、妻との過去の調査旅行の回想にかなりの尺を取る。必要があるのかな?と思っていたのだが、これが終盤にかけて効いてくる。

 ヘイエルダールがスポンサー探しに奔走したり、仲間たちを集めたものの資金が途絶えて苦労するあたりは少々退屈だが、筏の建造過程は航海に持って行くカメラを使ったモンタージュでさらりと処理して、いよいよ海に出ると、あとは全く退屈するいとまがない。

 見せ場の連続であり、登場人物の描きわけ、葛藤も過不足なく描かれる。コン・ティキが海に出る瞬間、ヘイエルダールが不安そうな顔をするあたりが後半の伏線になっているし、筏を形作っている木材が海水を吸って徐々に朽ちていったりしてゅっくりとサスペンスを盛り上げていくのも巧い。主人公が金儲けのことも考えいて、無線でメディアと連絡を取ることにこだわっているあたりもリアルな描写である。サスペンス、ドラマ、そしてユーモアの配分も巧みだ。

 見せ場の盛り上げ方、物語の構成などには、ヨアヒム・ローニング+エスペン・サンドベリ監督、脚本のペッテル・スカヴランは、かなりハリウッドの娯楽映画を研究した跡が見えるが、何よりも素晴らしいのは自然描写である。

 「ライフ・オブ・パイ」での海の描写は、腕の立つフランス料理のシェフが素材にしっかりと手を入れた精妙な美術品の如き料理だった。「コン・ティキ」は腕っこきの板前が、ざくっざくっと素材に包丁を入れて、そのまま客に出したような"生"の迫力と美しさがある。

 C.G.I.や模型を全く使っていないということはないのだろうが、本物にしか見えない海の生物たちが次々と登場して目を奪われてしまう。そして登場人物たちと信じられないような絡み方をする。

 最終目的地を目前にしてのだめ押しのスペクタクルがあり、そのあとに意外な人間ドラマが待ち受けている。これが単なる冒険映画を越えた大きな感慨を呼ぶ。

 馴染みのない俳優たちも適材適所で好演。
 ヘイエルダール役のポール・スヴェーレ・ヴァルハイム・ハーゲンは、エドワード・ノートンとジェームズ・スチュアートを足して二で割ったような個性で親しみやすい。

 公開規模は大きくないようだが、これは絶対に劇場のスクリーンで観るべき作品だと思うぞ。




 読んでみるつもり。

コン・ティキ号探検記 (河出文庫)
トール・ヘイエルダール
河出書房新社 (2013-05-08)
売り上げランキング: 3,894


 

by broncobilly | 2013-07-02 07:23 | 映画評
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