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映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「誰でも一つは持っている・番外編」"ジェフ・ダニエルズの見た二人のスーパースター"


 「キネマ旬報」誌に連載させていただいているエッセイ「誰でも一つは持っている」では、毎号、未訳の洋書や日本未発売のDVDからスターたちや映画作家たちの興味深いエピソードを紹介するというもので、ありがたいことに最新号で第110回目を迎える。
 
 先日公共ラジオNRRで放送されている名物インタビュー番組Fresh Airのpodcastを聞いていて、実に面白いエピソードを知ったのだが、ラジオ番組で聞いたネタをそのまま誌面に書いて原稿料を頂戴する、というのはあまりにも楽ちんすぎるかなあと思って(たくさん洋書を読んだりDVDを観たりして、逸話を捜し出し、エッセイ化するというのは、それなりに骨の折れる作業なのです)、今回「誰でも一つは持っている・番外編」として、ここで紹介してみたい。


 ベテラン・インタビュアー、テリー・グロスの質問に答えるゲストはジェフ・ダニエルズ。WOWOWで第一シーズンが放送されたダニエルズ主演シリーズ「ニュースルーム」(傑作です)の番宣としての出演なので、前半はこの番組についての質疑応答なのだが、番組後半になるとダニエルズの出演映画にも話題が及んでいく。

 「ブラッド・ワーク」(02)でのクリント・イーストウッドとの仕事について尋ねられたダニエルズは、イーストウッド監督が本当にワンテイクだけで次々と撮影を進めていくのを目の当たりにした驚きをまず語る。これはイーストウッドとはじめて仕事をした俳優が必ず受ける印象なので、聴いていてもあまり驚きはない。

 面白かったのは、こんな観察だ。

 俳優イーストウッドは、「アクション」の声がかかると同時に(監督であるイーストウッド本人がかけるわけだが)、"クリント・イーストウッド"というキャラを身に纏う。それは世界中のイーストウッド・ファン、映画ファンが知っている表情、身振り、声の総合体だ。イーストウッドはカメラが廻っている間"イーストウッド"を演じ、そして「もうそろそろいいだろう」と呟いてカメラを止めさせると、一瞬にして"クリント・イーストウッド"というキャラから抜け出して、一人の人間に戻るのだという。

 「ぼくが仕事をしてきた中で、同じような人はもう一人しか見たことがない」とダニエルズ。

 それはダニエルズの映画デビュー作である「ラグタイム」(81)にN.Y.警察長官役で特別出演したジェームズ・キャグニーだという。

 当時八〇才を越えていたキャグニーは、映画界を引退して所有する牧場で暮らしていたのをミロシュ・フォアマン監督に請われて「ラグタイム」に出演した。弱々しい老人となっていたキャグニーは、最初台本4ページ分あったセリフを「無理だ。できない」と少しずつ削らせていき、最後には4行ほどのセリフしか残らなかった。だが、この時点でキャグニーは「これならできる」と呟き、フォアマンはカメラを廻させた。

 その瞬間、キャグニーは弱々しい老人ではなく伝説の"ジェームズ・キャグニー"になった。モノクロのモニターを息を詰めて見つめていたダニエルズにも、そのことははっきりとわかった。ほんの短い場面が終わると、キャグニーはまた平凡な老人に戻ったが、満足したフォアマンはOKを出した。

 クリント・イーストウッドが最も敬愛する俳優はジェームズ・キャグニーである。








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 "本家"「誰でも一つは持っている」はカーク・ダグラスの I Am Spatacusのこと。

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by broncobilly | 2013-07-20 19:10 | 映画メモ
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