おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「ローン・レンジャー」(The Lone Ranger, 13)

 いにしえのテレビ・シリーズの(実は二度目の)長編映画化。
 仮面のヒーロー、ローン・レンジャー(アーミー・ハマー)とインディアンのトント(ジョニー・デップ)が大西部を舞台に悪と戦う。

 「パイレーツ・オブ・カリビアン」製作陣結集ということで、あんな感じのノリなんだろうなあ、と思って観に行くと、いやまあ、確かにあんな感じのノリではあるんだけど、しかし背負い投げを喰らわされたように感じるところも多し。

 まずはテンポが悪い。スーパーヒーロー映画一作目というのは、ヒーロー誕生の顛末を説明するのに尺を取るのは仕方ないのだが、それにしてもこの作品は、話が本格的に転がり出すまでが長すぎる。

 回想形式になっていて、時々現在(1933年)の場面がインサートされるのが、せっかくできかけた流れをぶつ切りにしてしまうのも辛いところ。

 ウォルト・ディズニー・ブランドにしては、暴力や流血の描写がなかなか鮮烈で、これではお子様方には無理でしょう。

 スタントの皆さんは大健闘だが、しかしここ一番のアクション場面が急にC.G.I.くさくなってしまうのもいかがなものかと思う。クライマックスで"時間"と"語り"を利用した作劇上のトリックが使われているが、あまり上手くいっているとも思えない。

 本国アメリカでの大コケも当然と思うのだけれど、では嫌いなのかと言われれば、けっこう好きな作品だ、と答えることになる。

 まずは長くくどくなって血腥くなったなった一つの原因はここにあると思うのだが、今の時代にインディアンが出てくる西部劇を作ろうと思ったら当然出てくるテーマから逃げていないということがある。白人によるインディアンの迫害や虐殺をストーリーの中に取り入れて、しかも偽善的なハッピー・エンディングにしていない。

 これは余談になるけれど、日本語字幕で"Indian"をすべて「先住民」と訳していたことには強い違和感を覚えた。"Indian"という言葉が普通に使われていた時代を背景にした物語で、いわゆる「差別語」を言い換えるのは、言葉狩りではないのですかね。だいたい、昨今では"Indian"と呼ばれて生きてきた苦難の歴史にもプライドを持とうということで、みずから"Indian"という呼び方を選択する先住民の方が多いのだけれどね。

 そしてこれも昨今はやりのテーマなのだが、持つものVS. 持たざるもの対立、がはっきりとしたテーマになっていること。アメリカ的資本主義批判が前面に出ている。ラスト近くのローン・レンジャーも、社会の発展を守り続ける、というよりは、資本主義の暴走を見張る、という意思を表明しているしなあ。

 つまり、夏の娯楽大作のようでいて、けっこうマジメなのである、この作品は。だからすっきりしない。

 もう一つ気に入ったのが、スパゲティ・ウエスタンの影響が実に強いところ。例の「ウィリアム・テル序曲」が鳴り響くところ以外は、あきらかにモリコーネの、特に「ウエスタン」を強く意識したスコアになっている。テキサス・レンジャーの一団が着ているダスター・コートとか、主人公の兄の妻子が襲撃される場面、列車アクション、トム・ウィルキンソン演じる悪玉の造形など、この作品の下敷きになっているのは、レオーネの「ウエスタン」だと思う。

 スパゲティ・ウエスタンへのオマージュといえば「ジャンゴ/繋がれざる者」が真っ先に思い浮かぶが、タランティーノは戦争映画だろうがスパゲティ・ウエスタンだろうが、結局は"タランティーノ映画"という独立したジャンルになってしまうので、「ローン・レンジャー」のほうがイタリア製西部劇へのオマージュとしては、真っ当なのではないかなあ。

 そしてなんと言っても、久々にモニュメント・ヴァレイの絶景を、大スクリーンでたっぷりと堪能できたのが有難かった。ゴア・ヴァービンスキーは、ところどころで優れた構図の感覚を見せてくれるのだが、がちゃがちゃしたアクション場面よりは、そんな美しくゆったりとした構図の方が嬉しかった。

 続編が作られることはまずあり得ないが、何かの間違いで作られたら、すっ飛んで観に行きます。




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 「キネマ旬報」最新号。「トゥ・ザ・ワンダー」特集にテレンス・マリック論を書きました。連載は第111回「予定されていた「ローマの休日」の監督とは?」

キネマ旬報 2013年8月下旬号 No.1643

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by broncobilly | 2013-08-04 10:20 | 映画評
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