おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「ワールド・ウォーZ」(World War Z, 13)

 謎のウイルスの爆発的感染によって世界がゾンビに覆われる。元国連職員だったブラッド・ピットは、数々の修羅場をくぐってきた経験を買われて、ウイルスの治療法を探す科学者に同行することを政府機関に依頼され、安全な場所に家族をかくまってもらうことを条件に同意。しかし、探索開始直後に科学者が(ヒジョーに間抜けな形で)不慮の死を遂げてしまったことから、自分の力と知恵とで世界を救わねばならなくなるのだった。

 というわけで"Z"とはゾンビのことです。前宣伝ではゾンビという言葉を使わないようにずいぶん気を使っていたようだが、封切られたんで書いちゃいますね。ゾンビですよ。ゾンビ。

 ピット一家が異変に巻き込まれる序盤はとても見応えがある。ゾンビ映画が佃煮にされるほど作られる理由の一つに、製作費がかからないというのがある。メイクも安上がりだし、基本的には"立て籠もり方"の物語になるる。だから世界の終わりが前提になっていても、大抵の作品は、どこかの場所に立て籠もった少数の生存者たち+建物を取り囲み、進入しようとするゾンビたち、を描いていれば事足りるのである。

 ゾンビたちの跳梁によって終わっていく文明を、たっぷりと金をかけてマクロ的な視点と(ピット中心の)ミクロ的な視点とを上手く組み合わせて描いているのは新鮮だった。

 またゾンビ映画の多くは、製作費の安さをごまかしつつ、インパクトを強めるために、肉体の破損や流血をこれでもかとばかりにどぎつく描写するのがお約束だが、この作品は莫大な製作費がかかっているので、ニッチの観客だけを狙っていては利益が出ない。そこでレイティングを緩めてもらうために、流血や暴力は、ゾンビ映画のスタンダードからすれば控えめにしたとのこと。

 それでもシチュエーションの面白さとテンポの良さで見せてしまう。直接的な描写を避けることによってむしろ恐怖が増した場面もある。

 ピットが世界中を飛び回る中盤は、主人公があまりにも強くて万能で不死身なので笑ってしまうが、目先が変わるし、スペクタキュラーな見せ場も多く楽しませてくれる。

 ただ冷静に考えてみると、人々がなんとか生き残って上手くやっている場所にピットがやってきて、それをきっかけにカタストロフィが訪れる、という段取りが繰り返されるので、実は一番の疫病神は主人公なのでは? という疑問が頭をもたげてくるのだが。

 問題なのは終盤。WHOの研究施設で、ゾンビたちを振り切りながら、実験に必要な薬品を取ってくる、という、ここは伝統的なゾンビ映画らしい見せ場となるのだが、実験に成功して、さあ、これから、というところで、残りはナレーションとモンタージュだけで処理され、映画が終わってしまうのだ。

 監督と主演スター/製作総指揮の不仲、現場の混乱、予算超過、公開延期、一部撮り直し、と、ずいぶん前から悪いニュースのたくさん伝わっていた作品である。

 そんな裏側のある作品は、大抵の場合いびつな仕上がりになっている。この作品には、この終盤までは"いびつさ"を感じずに楽しんでいたのだが、ここで、やっぱりおかしいな、と感じずにはいられなかった。

 サマー・ムービーの大作として絶対に必要な"もう一押し"がないのである。尻すぼみなのだ。

 序盤、中盤で派手な見せ場をたっぷりと披露した作品は、クライマックスに一番高い山を設定しなくてはならない。

 (古い例で恐縮だが)「タワーリング・インフェルノ」は大火災が消えていく、のではクライマックスがないので、火を消すために高層ビル屋上の貯水タンクを爆破して、生き残った人々が水と戦うという見せ場が最後に用意されていた。

 (もっと古くなるが)「ポセイドン・アドベンチャー」は、船の転覆というスペクタクルの見せ場を最初の方で見せてしまっているので、終盤では、主人公が死んでしまう、という思い切った手でクライマックスを作っていた。

 「ワールド・ウォーZ」は、ゾンビ映画であり、またディザスター・ムービーなのだから、どうしても"もう一押し"が必要でありながら、不在なのだ。

 序盤、中盤が楽しかっただけに、なんとなくスッキリしない思いを抱えて、劇場を後にいたしました。




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by broncobilly | 2013-08-13 11:50 | 映画評
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