おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「貞子3D 2」(スマ4D版、13)*ちょいネタばれ

 前作「貞子3D」を鑑賞した時は実に楽しかった。作品そのものの出来はともかくとして、劇場内をぎっしり埋めた中坊の観客たちがギャーギャー騒ぎ、笑い、悲鳴を上げていて、なんというか童心に返って(違うか)、日頃は観客の私語や携帯チェックには神経質でイライラするぼくも、"映画という見世物を見る"原点に返ることができたような気がしたのだ。

 というわけで今回もスマ4Dの回を選んで、携帯電話は嫌いでスマホも持っていないのでiPod Touchに専用アプリを入れて、映画の日で(実質的には)夏休み楽日である今日、つまり中高生が一番多く来そうな日にわざと出かけたのである。ぼくの夏休みはもう少しだけ続くので、空いている平日でもよかったんだけどね。

 スクリーンはともかく、観客席がよく見渡せる一番後ろの方の端っこの席を予約して出かけた。こうなると映画を観に行っているのか、何を見に行っているのか、よくわからない。

 前作を見た時は近所のシネコンの小さめのスクリーンの部屋が満席に近い状態だったのだが、今回は大きめのスクリーンを確保している。ところが案に相違して入りは30%といったところ。中学生のグループもいくつか見受けられるが、カップル中心でちょいと寂しい場内であった。最近の中学生もせいぜいガラケーでスマホ保有率は低いのかね? でも、観客たちのスマ4Dへの反応は、それでも一応あって面白かった。

 開巻早々、田口浩正が登場して観客に向かい、アプリの使い方を懇切丁寧に解説してくれる。ここでiPod Touchユーザーに朗報。スマホがなくても大丈夫でした。ということはiPadでも大丈夫ということか・・・。

 さて、物語が始まってみると、スマ4Dというやつは思ったよりも、頻繁にイベントがある。こいつはやられた!と愉快なものもあれば、全く意味不明で、特にスクリーンと連動していないものもある。貞子(?)からの呪いの電話にはiPodも反応し、そうではない通話の時には反応しない。一応凝ってます。

 貞子(?)による殺人の場面ではスマホ(ぼくはiPodだけど)の画面が赤くなって、ぼく(観客)がその時点でどれくらいリング・ウイルスに感染しているか教えてくれる。

 その他にもイロイロと工夫は凝らされている。iPodの画面に「この顔はヤバイ!」とメッセージが出るので、注視していると、なるほど世にも恐ろしく醜い顔が見える。次の瞬間気づくと、なんだ、俺の顔じゃん! 悪かったな、ヤバイ顔で。

 というわけで、カメラ、フラッシュ、連絡先、などの機能も駆使して笑わせて、じゃなかった、怖がらせようとしてくれる。

 嫌いじゃないです。ウィリアム・キャッスルの精神が甦ったみたいでね。キャッスルの「ティングラー」(59)は寄生虫ティングラーを追い払うためには悲鳴を上げねばならない、という設定で、映画を見ている観客たちに悲鳴を上げさせるというギミックで知られる作品だが、「スマ4D」でもある場面で、観客たちに叫ばせようとする。でも、場内で叫ぶ観客は一人もいない。ぼくも含めて。

 黒澤明の「素晴らしき日曜日」(47)は"第四の壁"を破ることを試みた先駆的作品である。ヒロインが観客に向かって直接「私たちのために拍手をしてください!」と訴えかけるのだ。

 だが、封切りの時も誰一人、日本では拍手をする観客はいなかったとのこと。しかし、黒澤の自伝によるとフランスでの上映では観客が熱狂的に拍手して、異様な感動が盛り上がったという。

 その話を知って以来、「素晴らしき日曜日」をスクリーンで観るチャンスがあったら、絶対に拍手をしようと想い続けていた。ぼくの拍手に釣られて周囲の観客も拍手をし、かくて日本で歴史上初めて、完璧な形で「素晴らしき日曜日」が上映される。

 二十年ほど前のことだが、ぼくはついにスクリーンで(ビデオやDVDでは何度も観ていた)「素晴らしき日曜日」を鑑賞する機会に恵まれ、そしてクライマックスとなり、やっぱり拍手はできなかったよ。やっぱり日本人です。

 スマ4Dはイロイロ考えさせてくれたし、楽しかった。今後も試行されるべきものだと思う。

 ただし、「貞子3D2」に限って言えば、スクリーンに映し出される映像や物語と完全にシンクロしていたとは言い難いし、スマホのスクリーンと大スクリーンとの間で頻繁に視線を行き来させねばならないので、物語に集中しにくい、つまり恐怖を感じにくくなる、という欠点もある。

 まあ、物語と言っても、非常にたどたどしいもので、「光る眼」とか「悪を呼ぶ少年」とか「オーメン」みたいな、"恐怖の子供"テーマなわけだが、どうにも運びがまだるっこしい。前作は馬鹿馬鹿しかったが、一直線に前に進む活劇的なスピード感があった。今回はなんだかもたもたしている。

 登場するキャラクターが何を考えているのかわからないし、セリフにも不自然な言い回しが多い。しかし、終盤に近づいてくるとようやくガチャガチャしていた要素が纏まってくる。

 幼い頃に母を救えなかったというトラウマに苦しみ続けているヒロイン、瀧本美織が"子"貞子の母となることで少女を救済し、自らも救われるというテーマは悪くない。前作に続いて登場するヒロインの兄、瀬戸康史の意図や葛藤も明らかになって、ようやく話にも筋が通ってくる。

 ぼくは「仮面ライダーキバ」を観ていたので、瀬戸がぼこぼこにされる場面では「早く変身してやっつけちゃえ!」とイライラして困った。「あまちゃん」を観ていても、種市先輩がピンチになると「早くフォーゼに変身して、前髪クネ男なんか一撃で葬れ!」と思ってしまう。でも「貞子3D」では悪役を演じている山本裕典もライダー(サソード)なんだよな・・・。

 英勉監督は構図の感覚の良さを時々見せてくれる。瀧本が画面の方に歩いていて、その後ろの坂を自転車が下りてくるショットや、海の上に架かった橋を撮すショットなど、3Dの効果もあって、ふっと画面に引きつけられる。

 見世物的な要素を減らして、登場人物を掘り下げ、英監督のショットの感覚をもっと生かせば本格ホラーの秀作が生まれていたかも知れない、と思いつつ、スマ4Dのギミックと観客の反応も楽しかったので、痛し痒しというところ。

 とりあえず、次回も(もしあるのなら)スマ4D版を見物に行きます。

 さて帰宅してアプリを削除しようとし、一応開いてみると・・・・。




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by broncobilly | 2013-09-01 16:11 | 映画評
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