おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「サイド・エフェクト」(Side Effects, 13)

 スティーヴン・ソダーバーグ監督の劇場用映画引退作とされている作品(と言っても日本では、ソダーバーグが有料テレビ用に作った「恋するリベラーチェ」が年内に劇場公開される模様)。

 鬱病のため、衝動的に自殺を図ったルーニー・マラが、精神分析医ジュード・ロウによって向精神薬を処方される。ロウは以前マラのかかりつけだった医師キャサリン・ゼタ=ジョーンズとも連絡を取りながら治療を進めるが、ある日、インサイダー取引で逮捕され、出所したばかりの夫チャニング・テイタムを、マラが刺殺してしまう。向精神薬の副作用(サイド・エフェクト)による夢遊症の間の犯行と言うことで、責任能力無しとされたマラは無罪になるのだが・・・・。

 ぼくはもともとソダーバーグが贔屓なのだが、今回も期待が裏切られることはなく、ヒッチコック流サスペンスとフィルム・ノワールを合体させ、ソダーバーグならではの感覚で料理したこの作品を、大いに堪能した。

 マラがテイタムを刺殺する場面は、ごく淡々と即物的に演出されているのがかえってショッキングで、技巧を凝らした筆致の演出とは対極なのだが、ぼくは「サイコ」のシャワー・シーンと似た衝撃を感じた。

 脚本のスコット・Z・バーンズとソダーバーグが組んだ前作「コンテイジョン」では群像劇のパズルの一つとして悪玉を演じていたロウが今回は主人公。マラが無罪となると共に、副作用のある薬を無責任に処方した医者として、世間から糾弾され居場所を失っていく姿を切迫感を感じさせながら生き生きと演じきっている。
 すべてを奪われたロウが逆襲に転じる終盤は大いに盛り上がる。

 テイタムはお付き合い程度の出演だが、マラがいい。「ドラゴン・タトゥーの女」では、もうすでにイメージが出来上がったキャラを、いかにちゃんと演じられるかという勝負をしていたが、この作品ではさまざまな顔を見せて、主人公と、ぼくたち観客を、翻弄する。

 主人公は(ロウ本人がそうであるように)英国出身という設定で「イギリスでは通院して薬を飲んでいると病人だと思われる。アメリカだと回復の途上だと思われる」というセリフも登場するが、精神状態を薬物でコントロールすることが、日本などと比べても、遙かに一般的になってしまっているアメリカの事情が物語の背景にあり、サスペンス・ミステリの背後にある風刺的な視点が、物語に深みを与えている。

 脚本も秀逸だが、やはり不自然で強引なところも目立つ。それを一気に見せきって楽しませてしまうのがソダーバーグの腕だ。例えば「ガールフレンド・エクスペリエンス」などで見せたようなカット割りの少ないドキュメンタリ・タッチの演出があるかと思えば、マラが自殺を図る場面では、かなりユニークな位置からのしショットがごく短く、しかもさりげなく挟み込まれていたりする。作品の性質上、未見の方のために詳しく書くことはできないのだが、後半には驚くほど官能的な場面も登場する。

 C.G.I.と爆発と破壊に充ち満ちたサマー・ムービーを続けざまに観たあとだったので、"大人のための静かなサスペンス"は実に美味だった。金のかかった夏映画の刺激に慣れすぎて感覚が麻痺しかかっていた、ぼくの心にはよい"薬"でした。




Side Effects
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 キネマ旬報最新号。
「新・午前十時の映画祭」記事に「レイダース」と「炎のランナー」初公開時の想い出を書きました。連載はカーク・ダグラスとダルトン・トランボの続き。

キネマ旬報 2013年9月下旬号 No.1646

キネマ旬報社 (2013-09-05)


by broncobilly | 2013-09-05 06:10 | 映画評
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