おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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The Sunset Limited, 11

 コーマック・マッカーシーの戯曲をマッカーシー自身がテレビ用に書き直し、トミー・リー・ジョーンズが監督した作品。舞台となるのはアパートの一室のみで、登場人物も二人だけ。

 線路に飛び込んで自殺しようとしていた白人の大学教授トミー・リー・ジョーンズを助けた元服役囚サミュエル・L・ジャクソンが間一髪で助け出し、質素なアパートに連れ帰る。

 かつては荒れた生活を送っていたものの、刑務所内で信仰を見いだしたジャクソンは、人生、というよりは人間存在そのものに絶望したジョーンズに希望を与えようと奮闘するが、ジョーンズの心の闇は果てしない・・・・。

 何もかもすっかりあきらめてしまったジョーンズの姿は、やはりマッカーシー原作の「ノー・カントリー」に登場した保安官の、その後の姿のようにも見える。

 監督してのジョーンズは、あくまでも手堅い。正攻法である。奇をてらわずに、二人のセリフのやりとり、表情、体の動きを誠実に、確実に映像に刻みつけていく。

 マッカーシーのセリフはやはり生き生きとしているし、対話だけの芝居の中から、やはりマッカーシー流の荒々しい暴力が立ち上がってくるのは大したものである。

 ところどころ、音楽が煩いな、というか、ここは音楽いらないんじゃないか?と思うところがあった。特に"信仰による救い"が提示される場面で、いかにも有難げな音楽がかかるのはいかがなものかと。

 ジャクソンのあくの強い芝居を、受け続けるジョーンズだが、ラスト近くで豹変する。救われるべき弱い存在から絶対的な悪(「ノー・カントリー」でハビエル・バルデムが見事に体現していたシーガーのような)に一瞬にして変身するのである。

 ジョーンズは、この場面が演じたくて、この作品を作ったのではないかな、と思った。それほど入魂の演技であり、背筋が寒くなるような恐ろしさだ。

 若い時にはとんがっていたジョーンズだが、最近は年齢のこともあって、若者を善導する(「ノー・カントリー」では救おうとして失敗する)老人、という役が多くなっていた。

 「サンセット・リミテッド」では久々にジョーンズの持つエネルギーの奔流が見られる。

 "信仰による救済"提示場面で、いかにも、な音楽が使われ、いくぶん安っぽくなっていたのも、実は計算ずくだったんだなと得心した。その、おそらくは計算ずくの、わざとらしさ、安っぽさの後に、"悪"と虚無"が牙をむく効果は絶大である。"

 善と悪の対決の果て、「ノー・カントリー」のように、善の側の完全な敗北にも見えるし、しかし、「ザ・ロード」のように、どこか救済の気配も感じられる。

 大物二人(マッカーシーも入れれば三人)による作品なので、日本では劇場公開されるか、WOWOW辺りで早々に放送されるだろうと思っていたのに、全く音沙汰がないのでブルーレイを取り寄せて鑑賞したが、見事な出来の作品であった。

 今後、マッカーシー原作の映画が何本か公開されることになっているようなので、「サンセット・リミテッド」もなんらかの形で、多くの日本の観客、視聴者に届くようにして欲しいものである。

 


 原作本。

The Sunset Limited
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by broncobilly | 2013-09-20 16:38 | 映画メモ
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