おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
最新号
https://www.amazon.co.jp/キネマ旬報-2018年6月下旬号-No-1782/dp/B07D32923K/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1528243400&sr=8-2&keywords=キネマ旬報+雑誌
外部リンク
最新の記事
「ザ・プレデター」(The ..
at 2018-09-15 16:55
HARD TIME(第一話パ..
at 2018-09-08 10:49
「アントマン&ワスプ」(An..
at 2018-08-31 17:23
以前の記事
検索
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧

「トランス」(Trance,13 )

 ロンドンのオークション会場からごゃの絵画「魔女たちの飛翔」が盗まれる。犯行に及んだのはヴァンサン・カッセル率いる一味。実はオークションハウスの従業員ジェームズ・マカヴォイが内部から手引きしていたのだが、犯行時のごたごたでカッセルに頭部を強打されたせいで、絵画の隠し場所を忘れてしまう。カッセルは催眠療法士ロザリオ・ドーソンのもとにマカヴォイを通わせて、なんとか記憶を取り戻させようとするのだが・・・。

 ・・・・するのだが、この設定からわかるように、現実と記憶の境目が曖昧になり、誰が誰を騙しているのかがこんがらかり、意外なオチに向かって物語が転がっていくことが予想されるだろう。実際にその通りである。

 なにせ監督がダニー・ボイルなので、どれほど華麗に、どれほどスピーディに、こちらの頭の感覚をかき乱してくれるのかと期待していたのだが、(ボイルにしては)案外温和しめである。

 「スラムドッグ$ミリオネア」、「127時間」で頂点を極めた大胆な映像表現は、むしろ後退している。

 もっとも、妄想なのか、現実なのか?、とか、どんでん返しに次ぐどんでん返し、なんていうパターンは、やり尽くされた感じがあるので、今更テクニックの限りを尽くして表現されても困るというのも本音である。デ・パルマの「パッション」を観たばかりだしね。良くも悪くも、あれを越えるものは難しいだろう。

 と思って、がっかりしたとは言えないまでも、比較的冷静に鑑賞していたのだが、事件の真相が明らかになるあたりからぐいぐいと引き込まれた。

 「パッション」では映像表現とどんでん返しのためのキャラ設定だったのだが、「トランス」は主人公のキャラを描くためのどんでん返しと映像表現なのだ。

 「127時間」の主人公が極限状態の中で、意識と記憶の壁を乗り越え、自らの腕を切断するという形での変身を遂げたように、「トランス」のマカヴォイもまた、極限状態の中でなにものかをまのあたりにし、そして彼の場合は怪物になるのだ。

 ぼくは、世間的には評判がよくないけれど、ひょっとすると最も好きなボイル作品である「サンシャイン2057」に出てきたモンスター、太陽に近づきすぎて、太陽をまともに観てしまって化け物になった男、を思い出した。

 クライマックスでは、それまでいくぶん控えめだったボイル節が炸裂し、映像の疾走感も見事なものだ。ここまで"ためて"いたんですね。

 余韻の残るラストもけっこうで、やっぱりボイルはいいなあ、と思った作品でした。




127時間 [Blu-ray]
127時間 [Blu-ray]
posted with amazlet at 13.10.12
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2012-06-22)
売り上げランキング: 44,889




サンシャイン2057 [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2013-10-02)
売り上げランキング: 16,270


by broncobilly | 2013-10-12 18:35 | 映画評
<< 「ダークスカイズ」(Dark ... 「ランナウェイ/逃亡者」(Th... >>