おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「恋するリベラーチェ」(Behind the Candelabra, 13)

 劇場用映画監督を引退することを宣言したスティーヴン・ソダーバーグが撮りあげた有料チャンネル用テレビ映画が、日本では劇場公開。実在のポピュラー・ピアニスト/パフォーマー、リベラーチェ(マイケル・ダグラス)と彼の付き人/秘書/恋人/息子代わりだったスコット(マット・デイモン)との関係を描く。

 ソダーバーグの多彩なフィルモグラフィには、かの過剰なエネルギーで周囲の人間をきりきり舞いさせる実在の人物を描く作品の系譜があり(「エリン・ブロコビッチ」00、「チェ」08、「インフォーマント!」)があり、また「恋するリベラーチェ」には、「マジック・マイク」(13)を思わせる師弟関係、芸道もの(この場合は"ゲイ道もの"と言うべきか)の、要素もあって、いかにもソダーバークが好きそうな内容。劇場用映画では扱い難い題材をのびのびと楽しげに撮っているのが、観ていても伝わってくる。

 田舎者の孤児であるスコットが、リベラーチェに見そめられ、華やかでアヤシイ世界に引き込まれていく前半、ソダーバーグはかっちりとした、そして技巧を凝らした演出を披露する。

 二人の関係が崩壊に向かい、スコットの精神が崩壊に向かう後半部分では、これまたいかにもソダーバーグらしい、手持ちカメラでのドキュメンタリ・タッチの演出が顔を出す。同じ作品の中でえんゅつてくにっくを使い分け、それでいて全体の統一が保たれているあたり、やはりソダーバーグの巧さには、やはり唸らざるを得ない。
 
 唸らざるを得ないのはダグラスの演技も同様。"実在の人物"、"ゲイ"と有利な条件を二つ満たしているので、エミー賞主演男優賞も当然と思えるが、実際に観てみると歳を取って弛みきった体を晒し、皺だらけの顔を晒しての熱演である。しかし、それだけではなく、リベラチーチェという人間の孤独と純粋さをも、なんだか変な言い方だが、"愛らしく"演じていて見事なのである。

 テレビで見た自らの老醜にショックを受けたリベラーチェは、アヤシゲな医者(ロブ・ロウが本当にアヤシゲでいかがわしくて最高)の整形手術を受け、ピカピカツルツルの顔に生まれ変わる。ついでに息子代わりのデイモンには、自分の顔に似せる手術を受けさせる。

 というわけで、作品の後半はダグラスもデイモンも(もちろん特殊メイクだろうが)テカテカツルツルの顔で登場。ブラック・ジョーク炸裂であります。

 お定まりのドロドロの後、しんみりとさせる和解が訪れる。この場面もよいのだが、さらにそのあとのラストが実に素晴らしい。華やかで、滑稽で、可笑しくて、美しくて、哀しくて、でも実に楽しいステージで、作品は幕を閉じるのである。この場面ではダグラスのオーラに、亡きリベラーチェのオーラも憑依して、スターXスター。"面白て、やがて哀しき"ならぬ"哀しくて、やがて面白き"幸福感が画面を満たすのだ。

 今年はまだ6分の1以上残っているけれど、ソダーバーグの新作を三本も見ることができたので、よい年であったと個人的には言える。三本とも素晴らしい作品だったよ。




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by broncobilly | 2013-10-14 17:35 | 映画評
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