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映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「キャリー」(Carrie, 13)

 言わずと知れたスティーヴン・キング原作、ブライアン・デパルマ監督による傑作(76)の再映画化。ぼくはこの作品で初めてキングとデパルマの名前を知った。キングの熱狂的ファンになったのは『ファイア・スターター』の翻訳を読んだ時で、デパルマ作品としては「キャリー」よりも次の「フューリー」に感動したのだが。それでも、「キャリー2」(99)なんてゲテモノも新宿まで観に行ったし、WOWOWで放送されたTVM版(02)版もちゃんと観ている。なんの自慢にもならないが。

 さて、今回のリメイク版、タイトル・ロールを演じるのがよりにもよってクロエ・グレース・モレッツということで、美少女なのに苛められるか??と不自然さを観る前から感じていたのだが、美少女とは言っても小動物系、ファニーフェイス系なのでメイクと角度によっては、ちょいと間抜けな顔に見えないこともない。演技もしっかりしているので、ちゃんといじめられっ子になっている。

 オリジナルは傑作だとは思うが、醜いアヒルの子だったキャリーが、プロムの夜に着飾ると、びっくりするほどきれいで・・・・、というあたりが、シシー・スペイセクでは不自然だった。その点、今回は、少女マンガのパロディによく出てくる、地味なメガネ女子が眼鏡を取ると意外にも・・・、みたいな感じがよく出ていて、この点は良かった。

 美人と言えば、今回キャリーの母を演じているジュリアン・ムーアも相当の美人。大熱演だが、やはりオリジナルのパイパー・ローリーのイメージが、ぼくには強すぎる。キャリーのキャラや描写には、モレッツのキャラに合わせた工夫が見えるのだが、母親の性格描写はオリジナルと変わらないのである。

 名高い体育館の惨劇場面、スペイセクのキャリーは怒りと絶望から、体の奥底にある超能力の井戸を解放してしまう、という感じだったが、モレッツは自らの超能力に最初から自覚的で、日頃から満々と体中に充ちていた力をやっと解放できた、という風に見える。

 オリジナル版ではキャリーに好意的だった体育の女性教師や、プロムのパートナーまでキャリーが殺してしまう設定だったのを、新版では一工夫加えている。ぼくは今回の処理も"あり"だと思う。

 キンバリー・ピアース監督の演出は、意外なほどデパルマを踏襲した部分もあり、脚本共々、原作やデパルマ版に対するリスペクトが充分にうかがえるのが気持ちいい。

 とまあ、ここまでは褒めておいて、やっぱりオリジナル版にあった青春ドラマの明るさがないのはやはり物足りない。男子高校生たちがタキシードを買いに行く場面は、今回も入っているけれど、オリジナルではこの場面のコミカルできらきらとした明るさが、クライマックス以降の惨劇をよりくっきりと引き立てていたのだが。

 でハルマ版と比べるといいろいろ不満も出てくるが、良いものが案外少ないキング原作映画としては一定の水準には達していると思う。

 *余談

 原作出版から40年近く経っているだけあって、イジメに写メやネットが使われるというアップデートがされているのは当然として、キャリーの母親がホームスクーリングを望んだが認められなかった、というとになっているのが面白かった。そうだよな、原作やデパルマ版の頃はホームスクーリングは認められていなかったし、キャリーが高校に通う必要がなければ成り立たない物語だもんね。
 それと例の"豚の血"場面の直前に、いじめっ子のボーイフレンドが「これはイジメとか悪戯じゃなくて犯罪なんだから、逮捕されるんだからな。腹をくくれよ」と念を押す場面も付け加えられている。日本以上にイジメが深刻な問題となっているアメリカだから、安易に真似をする輩がでないように釘を刺しておかねばということか。




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by broncobilly | 2013-11-09 15:40 | 映画評
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