おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
最新号
https://www.amazon.co.jp/キネマ旬報-2018年6月下旬号-No-1782/dp/B07D32923K/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1528243400&sr=8-2&keywords=キネマ旬報+雑誌
外部リンク
最新の記事
「ザ・プレデター」(The ..
at 2018-09-15 16:55
HARD TIME(第一話パ..
at 2018-09-08 10:49
「アントマン&ワスプ」(An..
at 2018-08-31 17:23
以前の記事
検索
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧

「プリズナーズ」(Prisoners, 13)

 ブルーカラー労働者ヒュー・ジャックマン+マリア・ベロ夫妻とテレンス・ハワード+ヴィオラ・デイヴィス夫妻、それぞれの幼い娘が一緒に誘拐されてしまう。ジェイク・ギレンホール刑事が容疑者ポール・ダノを逮捕するが、ダノは10歳児程度の知能しか持っていないため、単独での犯行は不可能と判断された上に証拠も不十分で釈放されてしまう。娘を思うあまり暴走するジャックマンは極端な手段に走る。一方ギレンホール刑事は、少しずつ事件の真相に近づいていく。

 米国で公開された時には大評判となった作品で、首を長くして日本での公開を待ったいたのだが、なんと5月の大型連休に封切りとのこと。

 待てません。

 というわけでBDを個人輸入して鑑賞。

 いやー、これは噂に違わぬ傑作でした。

 ジャックマンが取る"極端な手段"の描写が凄まじい。ハリウッドの映画だと、いわゆる"トーチャー・ポルノ"でも、描写が過激になればなるほど、逆にユーモラスになって衝撃が和らげられるのがお約束なのだが、この作品の場合はそれがない。パク・チャヌクとか「悪魔を見た」とか、韓国の映画を思い出した。アントワン・フークワやブライアン・シンガーが監督する話もあったようだが、最終的にはケベック州出身のドゥニ・ヴィルヌーヴに決まったのが良かったのだと思う。ハリウッド生え抜きの監督にはこの感覚は出せないと思う。

 "極端な手段"の衝撃が大きくなるのは、登場人物のキャラがしっかりと書き込まれているからでもある。ある過去のトラウマから"自助"と"父としての役割を果たすこと"に取り憑かれた人間としてジャックマンが描かれているので、彼の行動に説得力が出る。と同時に信仰厚い人間でもあるので、この男は相手だけでなく自分をも同時に責め苛むことになる。

 ギレンホール刑事は(役名がLokiというのもなんだかスゴイが)、どうやら体中にタトゥーを入れているようで、首には十字架が彫られているのが見えるし、手の指にも「狩人の夜」のロバート・ミッチャムみたいな指輪をしている。狩人なんだな。フリーメイソンの指輪が見える場面もあり、相当複雑な人物であることをうかがわせる。

 両人ともたいへんな熱演、好演。演じがいのある役を与えられた俳優の歓びが伝わってくる。

 脇を固めるのも巧い人たちばかりなので、役者たちを見ているだけでも至福である。

 さらに素晴らしいのは、これが第一級のミステリでもあるということだ。

 人間ドラマの重厚さを失わぬまま、後半は謎解きドラマとして怒濤の展開を見せるのだ。

 慎重に張り巡らされた伏線が結びつき、パズルのピースがすべてピタリと収まるべきところに収まって真相が明らかになる。脚本のアーロン・グジコウスキという名は覚えておくべきだろう。

 ロジャー・ディーキンズの撮影も秀逸。ジョージアの冬景色が物語に冷たく悲しい彩りを添えている。

 余韻の残る見事なラストまで2時間半を超す長尺が全く気にならない。

 そして観終わると、「プリズナーズ」というタイトルがじわじわと効いてくる。この物語には数多くの、さまざまな意味での"囚われ人"が登場するのだ。

 細部を確認しながら、劇場でぜひもう一度観たいと思わされる作品であった。







狩人の夜 [DVD]
狩人の夜 [DVD]
posted with amazlet at 13.12.30
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2011-06-22)
売り上げランキング: 47,645



 「キネマ旬報」最新号。発売は年明けですが。

キネマ旬報 2014年1月下旬号 No.1654

キネマ旬報社 (2014-01-04)


by broncobilly | 2013-12-30 16:24 | 映画評
<< 「ウォールストリート・ダウン」... 「ハンガー・ゲーム2」(The... >>