おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
最新号
https://www.amazon.co.jp/キネマ旬報-2018年6月下旬号-No-1782/dp/B07D32923K/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1528243400&sr=8-2&keywords=キネマ旬報+雑誌
外部リンク
最新の記事
「ザ・プレデター」(The ..
at 2018-09-15 16:55
HARD TIME(第一話パ..
at 2018-09-08 10:49
「アントマン&ワスプ」(An..
at 2018-08-31 17:23
以前の記事
検索
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧

「ウォールストリート・ダウン」(Assault on Wall Street, 13)

 ウーヴェ・ボルという映画作家がいる。エド・ウッド以来の"ある種の天才"として知られている人だ。どうして"ある種の"なのかというと、"どうすればここまでつまらない映画を作ることができるのか?"という疑問を観る者に感じさせる作品を量産しているのである。
 エド・ウッドと違うのは、どうやら資金力があるらしく、どれほど作品が貶されても、どれほど興行的に失敗しても、作品を作り続ける余裕があるらしいという点である。

 かくて、毎年数本のウーヴェ・ボル監督/脚本作品が登場し、IMDbでの採点は軒並み2.0とか3.6とかの間である。

 「ハウス・オブ・ザ・デッド」(03)、「ブラッドレイン」(05)、「アローン・イン・ザ・ダーク」(05)、「デス・リベンジ」(07、ジェイソン・ステイサム主演!)くらいまでは、"It's so bad that it's good."という感じで観ていたのだが、さすがにうんざりしてしまい、それ以外の作品はBS、CSで放映されるのを怖いもの見たさで録画して、でも再生して間もなくやっぱり退屈して消去してしまうことが続いていた。
 それでも、ボルが新作を発表するたびにIMDbの作品ページに吹き荒れる酷評と悪罵が面白くて、ボルの動向をチェックすることは続けていた。

 そんなボルに異変が起こった。彼の新作Assault on WallstreetのIMDbでの得点が6.1というボルとしては考えられない高評価で、ユーザー・レビューでも「ウーヴェ・ボルがついにやった!」、「偉大な作品!」、「ウーヴェ・ボルにも面白い映画が作れるとは!」etc. 驚きと絶賛の声に充ち満ちているのである。

 となれば、日本でも公開されることとなったこの作品、邦題「ウォールストリート・ダウン」を観ないわけにはいかないではないか。

 現金輸送車の警備をしているドミニク・パーセルは妻が難病で金に困っている。そんな彼を金融危機が直撃する。当てにしていた投資が一瞬にしてゼロになり、住宅ローンの金利が重くのしかかるようになる。自分のせいで夫が苦しんでいるのだと思い悩んだ妻は自殺。パーセルは自分と、全アメリカ人の99%を追い詰める真の極悪人=金融界の大物たち(一番悪い奴を演じるのはジョン・ハード)への復讐を決意する。

 傑作だとは思わない。しかし、ボルにもできるじゃん!という驚きは確かにある。いわゆる"ガマン劇"になっていて、100分程度の上映時間のうち、妻が自殺するまでで1時間近くの尺を取る。だが、ここまでが退屈ではないのである。多くのアメリカ人が怒りを感じている現実の問題を扱った素材自体は悪くないので、やり方を間違えなければ観客の共感は得やすいわけだが、今回に限ってボルは間違えていない。
 これでまでのボル映画のように「なぜ、ここでこんな展開に?」、「こんな考え方や反応の人間いるわけないだろ!」という要素がないのだ。男友達からいきなり吐瀉物を懸けられた女の子が愉快そうに笑い出す、とかいう場面がないのである。これだけでもボル映画としては長足の進歩である。

 以前は大物(中物?)スターも出演することの多かったボル映画だが、最近はマイケル・パレくらいでお茶を濁すことが多くなっていた(パーセルも最近のお気に入りらしい)。

 「ウォール・ストリートダウン」はパレ、キース・デヴィッド、クリント・ハワード、エリック・ロバーツなどという微妙な人たちが脇を固めているわけだが、それでもこれだけ揃えば枯れ木も山の賑わいという感じで、いくぶん豪華に感じないでもないでもないでもない。

 しかも、「この登場人物必要ですか?」、「このキャラはいない方がいいんじゃね?」というのもない。適材適所になっている。

 何だが当たり前のことで感心しているみたいだが、ボル映画の場合は仕方ないのである。

 なかでも主人公の同僚を演じているエドワード・ファーロングに感心した。老けて太って昔日の美少年の面影はあまり残っていないが、市井の人間の哀しさと優しさとを感じさせて、主人公と好一対になっている。

 いよいよパーセルが暴れ出す終盤で、フツーにオフィスで働いている人たちまで虐殺するので、????となってしまったが、IMDbを見ると、この辺りまで含めて喜んでいる人たちが大部分のようで、それだけアメリカ人のウォールストリートへの怒りは大きいのだろう。

 この辺りではちょっと複雑な気分になったわけだが、クライマックスのハードとの対決場面が秀逸で、こんな洒落たことを考える知恵があったのか、ボルよ!と感激の涙を流してしまった(ウソ)。

 さらに警官コンビであるパレ+デヴィッドと主人公との1幕で作品は終わる。この1幕は、まあ、お約束なのだが、きちんとお約束をやって作品を締めくくる、というのはボルとしてはあり得ないことだったのだ。

 実際、なかなか良くできたB級映画だと楽しみながら観ていても、ボルのことだからいつか何かをやらかして台無しにしてしまうに違いない、とハラハラしながら観ていたので、無事に完走した時の歓びは大きかったよ。

 ついに生まれ変わったかウーヴェ・ボル! これからはしっかり着いていくよ!! 期待してるぞ!!と思ったら、次の作品Suddenly(ドミニク・パーセルとレイ・リオッタ主演)のIMDbでの点数はやっぱり3.7でした・・・・。






ポスター A4 ウォールストリート・ダウン 光沢プリント



ウォールストリート・ダウン [DVD]
アメイジングD.C. (2014-02-05)
売り上げランキング: 76,190




 SUDDENLYも日本でディスクが出る模様。一応、観てみようかな・・・。

ザ・シューター 大統領暗殺 [DVD]
アメイジングD.C. (2014-03-05)




 どうやら、これのリメイクのようだが・・・・。

三人の狙撃者 [DVD] FRT-168
ファーストトレーディング (2006-12-14)
売り上げランキング: 148,889



 調べたら、この作品もボルの中では例外的に評価が高い。観てみようかな。

THE テロリスト [DVD]
THE テロリスト [DVD]
posted with amazlet at 13.12.31
AMGエンタテインメント (2010-06-18)
売り上げランキング: 129,155


by broncobilly | 2014-01-01 06:37 | 映画評
<< 「キリングゲーム」(Killi... 「プリズナーズ」(Prison... >>