おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「アメリカン・ハッスル」(American Hustle, 13)

 1970年代後半に実際にあった事件に基づいたケイパー・ムービーにして、人間ドラマにして、なんと言っても爆笑コメディ。クリスチャン・ベイルとエイミー・アダムス(愛人関係)のカップルを使って、政治家やマフィアをごっそり立てようとするFBIがブラッドリー・クーパー。クーパーの標的となるアトランティック・シティ市長がジェレミー・レナー。ベイルの本妻がジェニファー・ローレンスという充実したキャスト。
 旬の人たちが揃っている上に、コリーン・キャンプ(「死亡遊戯」)、アンソニー・ザーブ(遂に発売されたTVシリーズ「追跡者」のDVDセットを取り寄せて観ているところなので、ことさら嬉しかった)なんかも顔を見せているのが、ぼくのような年寄りの映画ファンにはウレシイところ。
 「ボードウォーク・エンパイア」のシェ-・カニンガムが「ウルフ・オブ・ウォールストリート」に続いてこちらにも顔を見せているし、こちらも「ボードウォーク」組のジャック・ヒューストン(ジョン・ヒューストン監督の孫)、そして"あのお方"まで顔を見せてくれるので、スコセッシ・ワールドとの地続き感が半端ないです。

 「スリー・キングス」が戦争アクションに見せかけたブラック・(爆笑)コメディで、しかもやっぱり戦争アクションとして成立していたように、「アメリカン・ハッスル」はケイパー・ムービーに見せかけたブラック・コメディのようでいて、しかもやっぱりケイパー・ムービーとして成立している。しかも、笑わされているうちに、こちらのガードが緩んでしまい、その隙を突かれて見事に騙されてしまうのである。。"騙し"のトリックは、テレビの「レバレッジ」とか「ハッスル」とかにも良くあるパターンなのだが、ドラマ部分とお笑い部分と演出のテンポとで、映画のキモとして成立させている。

 笑いとテンポを生むために、そして70年代の気分を出すために、デヴィッド・O・ラッセル監督は既製のポップ曲を多用して効果を上げている。「スリー・キングス」では、突撃場面に全く場違いなシカゴの「愛ある別れ」が突然流れて爆笑させられたが、今回のシカゴはベイルとアダムスの出会いの場面。「いったい現実を把握している者はいるのだろうか?」を使うセンスが素晴らしい。エルトン・ジョンの「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」、ポール・マッカートニー&ウィングスの「死ぬのは奴らだ」が使われる場面もやたらと可笑しい。

 三角関係、四角関係や、詐欺に伴う緊迫感で、登場人物の心が激しく揺れる場面が多い作品なのだが、ラッセルは登場人物の顔への急なズームや、クローズアップへの一瞬のカットを多用して、キャラの感情の揺れをテンポ良く表現している。

 ゲスな奴なんだけど、妙に人情に厚くて憎めないベイル、色っぽさの裏に哀感のあるアダムス、ひたすら気の毒なレナーも好演だが、ローレンスの爆発的な勢いとエネルギーが掠ってしまう。
 ローレンスのせいで殺されそうになって帰宅したベイルとの夫婦げんか場面の演技と、彼女が駆使する開き直った奇っ怪な論理には爆笑させられました。
 主役五人の中ではF.B.I.が一番損な役なのに、プロデューサーを兼ねながらこの役を引き受けたクーパーは偉いと思う。余談になるが、FBIというのはエリートで高給取りだと思っていたのだけれど、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」と「アメリカン・ハッスル」を続けて観るとイメージが変わりますな。

 「面白うて、やがて哀しき」というしんみりとした後味が残るラストもいい。

 「ウルフ・オブ・ウォールストリート」、「それでも夜は明ける」、「キャプテン・フィリップス」、「ダラス・バイヤーズクラブ」、「ゼロ・グラビティ」と実話の映画化が今年の賞レースを賑わせているが(最後のは違うか)、「アメリカン・ハッスル」も、これらの作品と肩を並べる価値が充分にある作品である。








 サントラなんだが・・・。

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 「愛ある別れ」と「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」は収録されていないようなので・・・。



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by broncobilly | 2014-02-06 17:52 | 映画評
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