おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「ネブラスカ」(Nebraska, 13)

 アレクサンダー・ペイン監督のロード・ムービーというだけで、絶対に悪いはずはないという期待が高まるのだが、今回もやってくれました。予想以上に良かったです。

 「あなたに百万ドルの賞金が当たりました!」という詐欺商法を信じてしまった老人ブルース・ダーンが賞金を受け取りにネブラスカまで行くと主張。ほっとくわけにもいかず、息子のウィル・フォーテも同行することに。

 途中でかつて一家が暮らしていた父の生まれ故郷の町に立ち寄るのだが・・・。

 ペインの前作「ファミリー・ツリー」は色彩が舞台となるハワイの自然と街並みを美しく捉えていたが、今回はモノクロの画像がアメリカの地方都市の佇まいを水墨画の味わいで映し出している。

 酒浸りの偏屈オヤジで、しかもまだらボケの入っていそうなダーンの立ち居振る舞いが実によろしい。物語が進んでいくと同時に、この男が悪い人間なのではなく、単に弱い人間であり、その弱さも善良さから出ているのだと徐々に観客に理解させていくシナリオが見事である。もちろん、ダーンの演技も味わい深い。

 卑猥な言葉を連発するダーンの妻ジューン・スキップも笑わせてくれるのだが、脇役の一人一人まで可笑しいか、しみじみしているか、しみじみと可笑しいかで、ぼくは観ているうちに何度も笑いそうになってしまったが、劇場を埋めていた高年齢層のお客さんたちが誰も笑わないので、必死でこらえていた。 親類の家に集まった老人たちがみんなで、ぼーっとテレビを見ているところとか、ろくでなしの兄弟とか馬鹿に可笑しかったのだが。


 フォルテと兄が、ある事情から圧縮機を盗み出す場面など、スリルとサスペンスに満ちていながら、しかも馬鹿に可笑しく、しかもしみじみとしているという信じられないほど素晴らしい一幕である。

 悪役として登場するのがステーシー・キーチ。ぼくはこの人の「探偵マイク・ハマー」が昔好きでずっと観ていた。前にも書いたと思うが「王様と私」の公演で来日した時はわざわざ観に行ったくらい好きだ。だから、久々に大きな役を演じているのを観て嬉しくなったし、いい演技を披露していた。

 淡々としているようでいて、これは「ホビット」なんかと同じで、勇者が旅に出て、困難を克服し、悪を倒し、お宝をゲットして故郷に戻る、という形式をきっちりと踏襲している。だから物語としての訴求力が強いのである。

 主人公の乗った車が画面の奥へと走り去っていく、というラストは昔アメリカ映画でよくあったけど、久々に観てやっぱりいいなあ、と思った。モノクロだったので、これも"親子"道中映画の「ペーパームーン」を思い出したりもした。




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by broncobilly | 2014-03-10 07:03 | 映画評
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