おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「白ゆき姫殺人事件」(14) *ネタバレしてます*

 昨日アップした文章で「あまりにもダメダメな邦画だと、ブログ用の文章を書く気になれない」みたいなことを書いたのだが、今日はうっかりと、ダメダメな邦画を観てしまった。「白ゆき姫殺人事件」。湊かなえ原作の「告白」、「贖罪」が良かったので、これも観たのだが、もうなんと言いますか…。

 酷評の嵐だろうと思って某有名映画サイトのユーザー・レビューをチェックしたら、意外な高得点で、べた褒めの文章が並んでいる。

 あり得ない。

 まあ、封切り直後なので、なんらかの仕掛けで高得点になっているだけで、今後は観た人の怒りの投稿が続いて点数は下がっていくのかもしれない。そう思いたい。

 これが全国のシネコンで大々的に封切られて、「LEGO (R) ムービー」とかが事実上限定的な公開というのは、どうにも納得がいかないよ。

 この作品がミステリとして通用して、観客がそれをよしとしてしまうとしたら、大変絶望的な状況だと思う。

 今回は「白ゆき姫殺人事件」は駄目な作品である、ということを、自分としては珍しく怒りを込めて書いてみたいと思う。

 だから敢えてネタバレをします。

 とにかもかくにも、突っ込みどころ多すぎ。

 殺人事件が起こり、元彼女から情報を得たテレビ・ワイドショーの契約スタッフ、綾野剛が調査を始める。

 大きなチャンスを掴んだこの男が、情報を独り占めせずに、調べた内容までTwitterでガンガンと呟いていくのが、まずは不自然。

 まあ、最近のニュースには、Twitterで信じられないことをしでかして墓穴を掘る莫迦もたびたび登場するからなあ、ととりあえず自分を納得させつつ鑑賞を続けたが、やっぱり変だよ。

 容疑者井上真央に関する情報が実名も含めてTwitterで拡散していくのだが、直接メールでやりとりすべき内容をTwitterで交換していたりするのもおかしい。

 情報の拡散も2ちゃんねるとかが出てくれば説得力があるのだけれど、あくまでもTwitterのみ。

 で、この契約スタッフは着々と調査を進めていくのだが、その過程で警察の影が全く見えないのもいかがなものか。

 全体としては「羅生門」スタイルで、関係者たちによる真偽のアヤシイ談話の中から真実が浮かび上がっていく、という構成で、この辺りの人間観は皮肉で面白い部分もあるのだが。

 それにしても、アイドル的な人気のあるクラシック演奏家が、通用口からではなく、ファンたちの待つ表から、しかもボディガードも連れずに危険な階段を下りてコンサート会場に、そこで
"事故"に遭い、瀕死の重傷なんてね、もう…。

 で、この"事故"の設定そのものに無理がある。
 真犯人の計画が杜撰なので、普通であれば自分が容疑者となっていることに気づいた時点で井上は警察に出頭するはずである。そうなってしまうとストーリーが成り立たない。ヒロインが警察に行けない理由がどうしても必要になる。そのための"事故"設定なのだろう。
 もしも"事故"が起こらなければ、その時点で露見した犯罪なのだ。
 "事故"があったにしても、井上にはすぐに真犯人がわかるはずなのに、それらしき描写もない。莫迦なんですか。
 
 何よりも呆れたのは、事件の真相を暴くのが綾野でも井上でもないこと。「当事者」としてクレディットされる井上が絶望して自殺しようとすると、テレビに映っているワイドショーから事件の顛末が語られるのを聞いて思いとどまるのだよ。あり得ないよ。

 基本的な設定とか情報の説明にTwitterの呟きとかワイドショーの報道とかを使いすぎているので、手抜きだなあ、とは思って観ていたけど、事件の核心は空から降ってくるんじゃなくて、綾野でも井上でもいいから、主役が辿り付かなきゃ駄目だろ!
 「羅生門」で真実(らしきこと)を語る杣売りは、少なくとも事件の現場を目撃していて、自分の言葉で語ったろ。

 小説のスタイルとしてはありなのかもしれないが、映画としては絶対にアウト。

 てか、実際「当事者」の一人である井上を取り調べぬまままに、警察は犯人を捕まえて自供を取って、その内容まで報道機関に流したってことですかあ。すいません、また書きます。
 あり得ない。

 あまりにもプロットホールが多すぎるので、ネット社会や、マスコミに対する風刺まで薄っぺらくなってしまっているし、綾野と井上を会わせる決着の付け方まで、何もかも不自然になってしまっているのだよ。

 もちろん、ミステリというのは不可避的に不自然な要素を持ってしまうジャンルではあるのだけれど、だからこそ、リアルにすべきところは徹底的にリアルにしなくてはならないはずなのだ。

 もともと大人げない人間だけど、大人げないことを書いてしまいました。
 でもね、劇場用としてちゃんとしたミステリ映画が作られて、ちゃんと評価されるってことは、とても大切だと思うのだ。
 だからぼくは「白ゆき姫殺人事件」みたいな作品が、ミステリ映画として堂々と公開されることが許せないのである。




映画 「 白ゆき姫殺人事件 」 プレスシート

by broncobilly | 2014-03-29 18:35 | 映画評
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