おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「ポンペイ」(14)、「ニード・フォー・スピード」(14)、「トカレフ」(14)を1日で観た

 朝一で近所のシネコンに出かけ「ポンペイ」鑑賞。ポール・W・S・アンダーソン監督が、またまた3Dで撮った歴史大(?)作。
 "火山噴火映画"というジャンルは確かに存在していて、「ジャワの東」(68)とか、とてつもなく酷かった「世界崩壊の序曲」(80)とか「ダンテズ・ピーク」(97、同じ年にはそのものずばり「ボルケーノ」という作品も公開されたが、こちらは地下から溶岩がわき出してくるという設定で、火山映画という感じはしなかった)他多数存在し、「ポンペイ最後の日」というタイトルの作品だけで、ざっと調べたところ四本は存在する模様。ヴェスヴィオ火山の噴火をテーマにした作品は他にも何本かある。

 自慢じゃあないが、ぼくはポンペイを舞台にした作品を、これまでに一本も観たことがないのだが、それ以外にタイトルを挙げた火山映画と比べて、アンダーソン版の今回の作品は、噴火と年崩壊のスペクタクルとしては最高のものなのではないかと思う。残念ながら3Dならではという効果はあまり感じられなかったが、噴火や火砕流だけではなく、海の水が急激に引いていった後の津波(これは記録に残っている)の描写なども実に迫力があり、東海地震に日々怯えながら暮らしている静岡県民としては心穏やかには観てられなかったよ(まあ、心穏やかに観ていられるのではパニック映画を観る意味はないのだが…)。

 それでは、これが面白い作品であったのかと言われると、それはまた別の話で、話がどうにも古くさい。パニック映画と剣闘士映画を組み合わせて両方の面白さを狙ったのはわかるのだが、虻蜂取らずという感じ。

 最悪なのは
 *ネタバレしますよ。




  主人公の男女がラストで死んでしまうこと。

 いやいや、主人公の男女が死んでしまうことが必ずしも悪いというわけではない。それはそれで純愛映画として成立するからだ。

 しかし、そこにいたるまでに噴火を背景として悪役のローマ元老院議員や、その腹心の部下との対決、そして勝利を描いておいて、それでも主役カップルは死にました、というのでは、その勝利が完全に無意味なものになってしまう。カタルシス0。せめてヒロインだけでも生き残らないと。

 実際の噴火ではポンペイ市民の大多数は、火砕流発生前にローマなどに脱出していて、映画で描かれているように脱出しようとした市民たちまで全滅、ということはなかったらしい。
 また主役男女が脱出に成功してしまうと、外側から噴火を観察することになってクライマックスが成立しにくくなると言うことは理解できるのだが。

 いっそ、悪玉を演じているキーファー・サザーランドを善玉の主人公にしてジャック・バウアーみたいに活躍させ、大多数の市民を脱出させる話にすればよかったのでは…、などと思ってしまいましたよ。


ポンペイ


 午前中に一本だけ観て帰宅し、原稿書きや読書などするつもりだったのだが、なんだかもの足りず「ニード・フォー・スピード」を梯子する。

 私的な街道レースでの(殺人に近い)事故の罪をなすりつけられ服役した主人公が出所し、仲間たちと共に復讐のためのレース参加を目指すという、ビデオゲームを基にした話。

 「ポンペイ」同様、アメリカでの不評と興行的失敗を知っていたので、最初から大きな期待はしていなかったのだが、それにしてもつまらなかった。

 C.G.I.をなるべく使わずにスタントマンががんばる、という姿勢は評価したいのだが、カースタントの見せ方が単調なのである。これを観ると「ワイルド・スピード」シリーズはいろいろと手を尽くしているのがよくわかる。

 いくらスタントが見せ場の映画とはいえ、やっぱりストーリーとか語り口も大切なわけで、この作品はそちらも拙い。
 主人公の出所から話を始めて、過去の因縁はフラッシュバックか何かを使ってさらりと描けばいいと思うのだが、この作品では因縁の部分を最初から延々と描く。これで尺を相当取ってしまい、結果131分という長尺になってしまっている。
この後のテンポも、なんだかもたもたしている。

 出演陣の中ではヒロイン役のイモージェン・プーツが個性的で面白いので、ドラマ部分ではこの人ばかり観ていた。他に観るべき人がいなかった。
 マイケル・キートンも、主人公たちの行動やレースをネット中継する大富豪、レース主宰者という、ちょっと「バニシング・ポイント」のクリボーン・リトルを意識したような役で出ているのだが、ノリノリで中継してるだけで、ドラマに関わってこないし、主人公と心を通わすような設定でもないので、なんだか空々しい。

 一番活躍する車がムスタングだからって、こんな出来損ない映画に、あの傑作「ブリット」の映像を使うなよ!と腹が立ってしまいましたよ。



ニード・フォー・スピード



 重い気持ちで帰宅し、さて今度こそ、仕事+読書と思ったのだが、口直しをしたくなって、絶対に口直しにはならず、腐ったものを食べて腹を下した後に、毒を飲むような行為だよなあ〜と思いつつ、ニコラス・ケイジ主演の「トカレフ」夜の回を観に、また街に出てしまう。アホだ、おれ。

 「トカレフ」。IMDbの点数は現在5.0。「ケイジの最低作」、「退屈・・・・・!」、「映画というものに対する冒涜」etc. エライ言われようである。

しかーし、意外にもなかなかよかったのである、これが。だから映画は観てみないとわからない。いや、酷いだろうなあと思って観に行く(行くなよ)映画百本のうち九十九本は実際に、と気には予想以上に酷いのだが、たま〜にこんなのにぶつかるから油断できないのである。

 娘を誘拐され殺された元アイリッシュ・マフィアのケイジ。凶器がロシア製の拳銃トカレフだったことから、過去に因縁のあったロシアン・マフィアとの対決に臨んでいく。

 どう見ても低予算だし、シナリオもよく書けているとは言い難い(あのわけのわからない「ジャーロ」とか、ひたすら退屈だった「ゲーム・オブ・デス」を書いた人たちだと考えれば、検討しているとは言える)のだが、パコ・カベサス監督の演出は案外がっちりしており、へんなはったりもなく安心して観ていられる。

 そしてなんと言っても、ケイジの存在感は、腐っても鯛というか、大したものだと再確認。「ポンペイ」も「ニード・フォー・スピード」も、主役の俳優が薄っぺらくて、全く魅力を感じられなかったので、やはりスターパワーというものは大切だなあ、と痛感した次第。

 この作品にはアクション場面もあるのだが、サスペンス・アクションのカタルシスを求めると肩すかしを食らう。これはもう、真っ当な悲劇である。ギリシャ悲劇とか三遊亭圓朝とか言っては褒め過ぎかもしれないが(絶対に褒め過ぎ)、低予算のB級作品だからこそ、スクリプト・ドクターとかの手が入ることもなく、「アクション映画なのにストレートな悲劇」というものが成立し得たのだろう。そして悲劇の主人公を熱演するケイジには惚れ惚れと見入ってしまう。
 ケイジとカサベスには再タッグの計画もあるらしいので、期待したいところ。

 「ポンペイ」、「ニード・フォー・スピード」に対するがっかり感が半端ではなかった分、「トカレフ」への評価が高くなりすぎているのは自分でもわかるのだが、この作品に救われた一日でした。





by broncobilly | 2014-06-08 08:15 | 映画評
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