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映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「GODZILLA ゴジラ」(Godzilla, 14)

 複雑な気持ちで見物に出かけた。一人の観客としては大いに楽しみたいのだが、心のどこかにはエメリッヒ版の「GIDZILLA」のような大失敗作であってほしいという想いもある。ギャレス・エドワーズ版の「GODZILLA ゴジラ」が素晴らしい作品で、日本では今後これを越えるものが作れそうもないとなると、ゴジラがアメリカのものになってしまう。そんな恐れがあったのだ。

 結果としては…。

 参った。堪能した。面白かった。コーフンした。

 とびきり上出来の怪獣映画を見せてもらったという大いなる満足感と、一抹の寂しさを感じながら家路を辿ることとなったよ。

 いろいろと興味深い作品であった。David Kalatは労作A Critical History and Filmography of Toho's Godzilla Series中「怪獣大戦争」(65)を論じる章で、ゴジラ映画の中で地球人(日本人)が対怪獣兵器として核を使用することを頑なに拒み続けることが「アメリカ人にとっては奇妙に思える」と書いている。

 なるほど「GODZILLA ゴジラ」では、核エネルギーを食するゴジラとムートーと対峙するために、米軍はさまざまな手段で核を駆使している。

 Kalatはまた、「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」(67)を論じる章で、アメリカの怪獣映画、侵略SFでは、人類が神に対する謙虚さを取り戻した時に勝利がもたらされると指摘し、「ゴジラの息子」で気象をコントロールするという"神の領域"を侵そうとする日本人科学者たちに、そのような謙虚さが一切ないことに奇異の念を抱いているようだ。

 なるほどエメリッヒの、こちらは成功作である「ID4」にもあったけど、「GODZILLA ゴジラ」にも決死の任務に出撃する兵隊さんたちが神に祈る場面がしっかりとあった。

 などと、日米の文化の違いを意識しつつ、たぶん文化の違いなど関係ない、怪獣映画としての愉しさに充ち満ちているのが「GODZILLA ゴジラ」の素晴らしいところだ。

 怪獣映画は人間の登場するストーリー部分が刺身のツマみたいになるのが宿命とも言えるのだが、「GODZILLA ゴジラ」では主人公のアーロン・テイラー=ジョンソンが苦難の果てに家/家族のもとに返る、という「ユリシーズ」を思わせる古典的な物語構造がしっかりとしている。そして主人公とゴジラの苦難/戦いをシンクロさせて、主人公とゴジラを一つのキャラクターの裏と表のように描くことで、テイラー=ジョンソンのストーリーにも深みを与え得ているのである。

 エドワーズの前作「モンスターズ」は好きな作品で、「GODZILLA ゴジラ」の監督に決まったと知ったあとに鑑賞したのだが、その時にはゴジラ映画とエドワーズのスタイルは合うのかな?それともスタイルとを変えてくるのかな?と思ったのだが、いやあ、実にエドワーズ映画でしたねえ。

 まずは、どちらも"旅"の映画だしね。

 ♂と♀のムートーが遂に出会うところなんて、まるっきり「モンスターズ」のクライマックスじゃん。

 怪獣を見せそうで見せないのも上手い。本格的にゴジラの全身が映ってからも、ゴジラとムートーの戦いを見せてくれるのかなあ、と思うと、さっとカットが変わってしまい、観客はお預けを食らうことになる。これが繰り返されることで、ラストのゴジラとムートーの戦いへの期待が高まっていく。

 幼い頃からのゴジラ・ファンであるぼくには着ぐるみ怪獣への愛着があって、C.G.I.でゴジラあ??と抵抗があった。エメリッヒ版を見た時には「ほら、やっぱこの程度じゃん」と、がっかり感+安心感があったのだが、やあ、C.G.I.の進歩は凄まじいですね。というより作り手のセンスの違いだろうが、今回は全く文句なし。

 ずんぐりとして頭の小さいゴジラのデザインも気に入った。

 クマを特集した「ユリイカ」で中沢新一氏がゴジラのずんぐりした胴体とクマの共通性を指摘しておられるのを読んだ時には、わが意を得た思いだったのだが、ぼくもゴジラの魅力の源泉にはクマを思わせるデザインなのではないかと思っていた。愛情と信仰の対象、守り神であり、同時に恐ろしい敵、破壊者、捕食者という矛盾した(していない、とも言える)存在として世界中の神話や伝説に登場するクマとゴジラの立ち位置は似ていると思う。

 今回のゴジラは、これまでのどのゴジラよりもクマに近いデザインで、ムトーとの戦う時の動きなども、とてもクマ的である。作り手はかなり意識しているのではないだろうか。

 ムートーにとどめを刺すときの"あれ"の使い方には感激した。この"画"を見せてもらっただけでも入場料金のもとは取ったよ。

 とりあえずもう一度劇場で見るつもり。やっぱり楽しんで、堪能して、そしてちょっぴり寂しくなるのだろうが。




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 やっぱりマグロ食ってる奴は駄目だ。

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by broncobilly | 2014-07-29 07:54 | 映画評
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