おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「猿の惑星: 新世紀(ライジング)」(Dawn of the Planet of the Apes, 14)

 前作「創世記」の成功を受けて作られた続編。
 前作ラストで蔓延することとなったウイルスのために人類のほとんどが死滅。サンフランシスコでは生き残った人々がゲイリー・オールドマンとジェイソン・クラークをリーダーとしたコミュニティを形作り細々と暮らしている。いよいよ燃料も尽きかけ、コミュニティ存続のためにダムを再稼働して電気を得ようと山奥にクラークたちが入ったことで、アンディ・サーキス"演じる"シーザーの率いるサルのコミュニティと接近遭遇。サルと人間の共存か戦いかを巡るドラマが展開していく。

 人間側とサル側の主人公をそれぞれ父親という設定にして互いの(そして観客の)共感を得やすいようにしているあたりは、ハリウッド映画の王道ではあるがやはり効果的である。

 最近売れっ子のクラークは熱演しているが、1作目のフランコのようなカリスマ性は(まだ)ない。だが、実質的な、というかビリング上でも、主役はシーザーなので問題ない。シーザーと彼を取り巻くサルたちは、これはサーキスたちに感心するべきなのか、C.G.I.の技術に感心するべきなのかわからないが、大変な熱演であり、自然な演技である。
 ドラマ部分に関しても、お家騒動、奸臣による裏切り(なんせシーザーですからね)、ボンクラ跡継ぎの成長物語と盛りだくさんで大いに盛り上げてくれる。

 これに比べれば人間側のドラマは付け足しみたいなもので、特にゲイリー・オールドマンは、悪役を演じる時のいつものオールドマン以上でも以下でもない。電力回復と同時にiPadに電源が入り、スクリーンに映し出された家族の写真を見て泣く、という場面があるのだが、この場面がこのキャラやストーリーに深みを加えているかというと、そんなこともないのである。

 マット・リーヴスの演出は例によって手堅い。だが手堅すぎて、決定的な面白味に欠けていることも確かである。やるこたあやってます、という感じ。

 それでも、サルと人間の和解を望みつつ、でも対決をほんとは見たい、という観客の気持ちを汲んで上手くクライマックスまで繋いでいるので、決して退屈はしないのである。

 と同時に、クライマックスは大サービス過ぎて、なんだかC.G.I.の紙芝居を見せられているような気持ちになって少々落ち着かなくなった。

 「戦場にかける橋」の原作者であるピエール・ブールが書いた原作に登場するサルは日本人のメタファー。旧シリーズ1作目のサルには、製作当時、公民権運動によって社会進出を果たしつつあった
アフリカ系アメリカ人に白人たちが抱いていた恐怖が投影されている、というのはもはや定説と言っていいと思うが、いずれ本格的な対決は避けられない、というメッセージで終わる、今回の作品のサルには何が投影されているのだろうか。アメリカ国内において急速に数を増やし、近未来にはマジョリティになることが確実視されているヒスパニック系アメリカ人だろうか、それとも信者の数がキリスト教を抜いて支配宗教になることが確実されているイスラム教徒だろうか。 

 そんなことを考えつつ見ていたら、登場人物にも、群衆の中にも、アジア系の顔が見えないことに気づいた。サンフランシスコが舞台なのだから、もっと黄色人種の顔が見えるのが当然だと思うのだが。
 そのあと、特に注意して観ていたら、モブシーンでアジア系の女性がちらりと映ったので、皆無というわけではないようだが。

 もしも、今回のサルに、アメリカ人のアジア人への恐れが投影されているとしても、それは日本人ではないだろう。
 現在、アメリカが日本に脅威を抱かねばならない理由はないからだ。
 覇権国家の地位を脅かす存在として、経済的にも、軍事的にもアメリカの(そして経済に限っていえばハリウッドの)根幹を揺るがしつつあるアジアの大国と、シーザーたちのコミュニティを重ねて観るアメリカ人の観客は、少なくないような気がするのだが。





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 「キネマ旬報」最新号。ジョン・フォード特集にちょこっと書きました。連載はドン・シーゲルの自伝から。

キネマ旬報 2014年10月上旬号 No.1672

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by broncobilly | 2014-09-20 07:02 | 映画評
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