おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「ゼロの未来」(THe Zero Theorem, 13)

 近未来の社会(なのかな?)。巨大企業で「100%=ゼロ」という定理を証明するという仕事に従事している天才プログラマー、レス(クリストフ・ヴァルツ)は、精神を病み、自宅勤務を申し出て許される。他人との接触を避けて生きてきた会社から派遣された慰安婦ベインズレー(メラニー・ティエリー)に心惹かれるようになり…。

 「未来世紀ブラジル」(85)以来久々の、テリー・ギリアムによるディストピア映画(「12モンキーズ」もそうかな?)とは楽しみな、と思って観始めた。

 自らのビジョンを生かした映画を作り続けるために苦難の道を歩み続けているギリアム。今回はなんと、スティーヴン・セガールのアヤシゲなアクションなどを製作しているヴォルテージ・ピクチャーズと組んでいる。大手のスタジオは相手をしてくれないのかもしれない。

 その分、ティルダ・スウィントン、ピーター・ストーメア、マット・デイモンほか、ギリアムゆかりの俳優たちが結集して、なんとかギリアムをもり立てようとしているのが涙ぐましい。
 おっ! ロビン・ウィリアムスも出てる!と思ったら、これは勘違いで「バロン」なんかに顔を見せていたパーカッショニストのレイ・クーパーだとのこと。エリック・クラプトンやエルトン・ジョンのステージで、この人は見たな。 
 ベン・ウィショーも一場面で登場。「スペクター」よりも前に、ウィショーとヴァルツの顔合わせが実現している。

 中盤からは舞台がほとんど主人公の住居内になるので、"未来世紀"を描くギリアム流のビジュアルは、今回はいくぶん控えめ。予算の都合もあるのだろう。
 しかし、この住居のセットがやはり魅力的なので、これはこれで充分に楽しませくれるのだが。

 さて、ディストピア映画だと思って観始めたのだが、どうも様子が違う。もちろん、ネット社会、格差社会など、現実を照応し、新鮮な視点を与えてくる部分もあるのだが、「ゼロの未来」は、社会風刺や批判の先を行っている。

 存在とは、生命の意味とは、死とは何か?といった命題に、いよいよ老境に入ったギリアムが挑戦しているようだ。

 その意味でラストの素晴らしいビジュアルに、ぼくは「2001年 宇宙の旅」に共通するものを感じた。

 興味深い作品であり、好きな作品である。




Ost: the Zero Theorem



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 最新号。「バードマン」特集で「アカデミー賞の「リアル」」を書かせてもらいました。連載は「プリンセス・ブライド・ストーリー」の意外なファンたちについて。

キネマ旬報 2015年4月下旬号 No.1686

キネマ旬報社 (2015-04-04)


by broncobilly | 2015-04-05 08:54 | 映画評
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