おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
最新号
https://www.amazon.co.jp/キネマ旬報-2018年11月上旬特別号-No-1793/dp/B07HSLVBTN/ref=sr_1_3/357-6990759-6652933?s=books&ie=UTF8&qid=1540598296&sr=1-3&refinements=p_lbr_one_browse-bin%3Aキネマ旬報
外部リンク
最新の記事
「ハイ・フライング・バード-..
at 2019-02-17 15:54
「ミスター・ガラス」(Gla..
at 2019-01-19 16:47
年末大掃除(2)
at 2018-12-30 10:11
以前の記事
検索
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧

「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(14)

 第二次大戦中、ドイツの暗号機"エニグマ"解読に成功し、コンピュータの基礎を築いた(映画では描かれていないが、量子力学の生成にも、この人は大きく寄与している)科学者アラン・チューリングを描いた作品。チューリングの悲劇に関しては、理解できないなりに好きで読んでいる科学書の何冊かで知ってはいたが、モルテン・ティルドウ監督の力の入った、そして端正な演出とグレアム・ムーアの巧みな脚本、そして主演のベネディクト・カンバーバッチを始めとする俳優たちの素晴らしい演技によって、新たな視点を与えられ、大いに堪能した。

 チューリングが同性愛者であったことが物語のキモになっており、このことを伝記映画として取り上げたことは、現在ならではと言える(例えばコール・ポーターの伝記映画「夜も昼も」46ではポーターの同性愛は徹底的にぼかされていた。2004年の「五線譜のラブレター」でははっきりと描かれるようになっていたが)。
 だが、作りとしてはよい意味で非常にオーソドックスなもので、チューリングの少年時代、第二次大戦中の努力、戦後の悲劇を巧みに行き来しながら、その存在自体が"エニグマ(謎)"であるチューリングの姿を鮮烈に描き出している。

 変わり者、天才という役はカンバーバッチにとって、当たり役のホームズと共通するので自家薬籠中のもの(カンバーバッチ版の「シャーロック」にはゲイのコノテーションもあるし)、その意味で新鮮さはないが、やはりカリスマがあるので惹きつけられてしまう。

 キーラ・ナイトレイも熱演だが、脇の中高年俳優がいい仕事をしているのが目についた。

 チューリングを敵視する中佐がチャールズ・ダンス(ちゃんと中佐と呼べ、と怒られたチューリングが、それからは一々嫌みったらしく"コマ〜ンダ〜"と呼びかけるのが可笑しい)。「ドラキュラZERO」では、ほとんどこの人とはわからない役だったが、今回は頭の固い古風な軍人役をしっかりと。最近はこういう役をきっちり演じられる人が少ないので有難い。

 野心に駆られてチューリングの逮捕を狙う者の、ある意味彼の理解者となっていく刑事がロリー・キニア。最近よく観る顔で、地味な人だが、この人が出ていればちゃんと場面がもつので、なんだか安心できる。テレビシリーズ「ナイトメア」での、フランケンシュタインの怪物役など、とてもいい。この作品でもカンバーバッチのテンション高めの演技を、しっかりと受け止めて、主役を立てている。

 MI6のエージェントがマーク・ストロング。この人の顔も最近しょっちゅう観るのだが、得体の知れない影を秘めた役は最も得意とするところ。

 チューリングの伝記映画でありながら、エニグマ解読の顛末には集団劇の面白さがあり、スパイ映画のテイストもある。2時間弱の作品とは思えぬほど、中身がぎっしりと詰まっていて、歴史映画としても人間ドラマとしても飽きさせない。
 見応えのある作品だった。




「イミテーション・ゲーム」オリジナル・サウンドトラック



エニグマ アラン・チューリング伝 上
アンドルー ホッジス
勁草書房
売り上げランキング: 29,170




夜も昼も [DVD] FRT-178
夜も昼も [DVD] FRT-178
posted with amazlet at 15.04.12
ファーストトレーディング (2006-12-14)
売り上げランキング: 76,352




五線譜のラブレター [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2007-02-20)
売り上げランキング: 74,906


by broncobilly | 2015-04-17 05:44 | 映画評
<< 「ワイルド・スピード SKY ... 「バードマン あるいは(無知が... >>