おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「ローマの休日」を(また)観てきたよ

 「新・午前十時の映画祭8」で「ローマの休日」(53)を観て参りました。

 劇場で観るのは大学生の頃に旧文芸座で観たのが最初。前々回の「新・午前十時」が二度目で、今回が三度目。もちろんTV、ビデオでも何度か観ている。

 いやあ参りました。今回が一番よかった。心の底から感激した。

 なぜだろうな、と考えて、すぐに理由がわかったのだが、ずばり、自分が年寄りになったからだと思う。

 それと、「ザ・マミー」と「トランスフォーマー/最後の騎士王」を続けて観て、特に後者に打ちのめされてしまっていたからである。

 これは映画ではない。なんかだかわからないが、映画ではないなにかであることは確かだ、と呆然としながらスクリーンを見つめていたショックからまだ立ち直れていなかった。

 実は今回の「ローマの休日」はパスするつもりでいたのだが、ウィリアム・ワイラーの端正な演出で「最後の騎士王」のデトックスをしたくなったのである。

 いやあ、癒やされました。

 スペイン広場大階段の途中にオードリーがちょこんと腰掛けていて、背後に史跡が見えるのを仰角で撮っていて、グレゴリー・ペックが右側からフレーム・インしてくるところなんて、ひたすら美しくて、それだけで涙が出てきたよ。

 自分のベッドで眠りこけているアン王女(オードリー)をカウチに移動させようとするジョー(ペック)、なんてちょっとしたお笑い場面なのだが、演出の鮮やかさに惚れ惚れとしてしまった。

 自分的には発見があった。まあ、みんな知っていることで、ぼくだけがぼーっとしていて、発見したつもりになっているのだろうが。

 スクーターを暴走させて警察に捕まったアンとジョー。ジョーはアメリカの記者証をちらつかせながら、結婚式を挙げるために教会へ急いだ結果の暴走だとはったりをかまして、二人は釈放される。
 警察署の前で、あの記者証はどういうこと?と詰め寄るアンを、ジョーと友人のアーヴィング(エディ・アルバート)はごまかそうとするのだが、なおも納得しないアン。
 そこへ、二人が新婚だと騙されたままの「暴走被害者の会」の皆さんが出てきて口々に祝福、ハグ、キス。追求はなんとなくうやむやになってしまうが、それでもアンは納得していない表情。

 ここで、アンはジョーの正体に薄々感づいていたんだなあ、と今回初めて思った。

 だから、ジョーとアンの車中での別れの場面で、ジョーが正体を告白しようとするのを、アンは必死で止めるのだ。わかっていたから。

 自らの意思で最後まで虚構の一日を満喫し、あえて虚構のままでピリオドを打ったのだから、その直後に王女としての現実を完全に受け入れて、大人として生き始める。就寝前のミルクとクッキーは拒否。

 記者会見でジョーとアーヴィングの姿を見たアンの表情も、驚いてはいるが、驚愕ではない。もし、ここで初めて真相を知ったのであれば、もっと大きな驚き、そして多分怒りもなくてはおかしい。

 前々回の「新・午前十時の映画祭」の公式プログラムにも書いたのだが、ペックは友人のロジャー・ムーアにこんな思い出話をしたという。

 ラスト、アンといよいよ永遠に別れることとなったジョーの姿を、ペックは情緒たっぷりに演じようとしてワイラーに叱責された。「怒れ! 怒るんだ!」と。身分の違い、などというアメリカ人には理解不能な理由で真実の愛を奪われたジョーは、怒っていなければならない、とペックは瞬時に理解し、ワイラーという監督の凄さを思い知った。
 
 前回観たときもそうだったが、今回もジョーが怒っていることが確認できた。

 理不尽な力に大切なものを奪われる怒り、というのは、赤狩りの犠牲となり、近年までクレディットに名前を出してもらえなかった(現行のプリントではしっかりと記されている)、ダルトン・トランボ(原案)の怒りが込められているのだと思う。それを、やはり一貫して赤狩りに批判的だったワイラーが、しっかりと汲み取ったのだ。

 赤狩り最盛期の映画人の集まりで、セシル・B・デミルは共産主義の恐怖について大演説をぶち、その中で「ヴィリー・ヴァイルダー、ヴィリアム・ヴァイラー」と、わざとロシア風に、二人の大監督の名を読みあげた。これに抗議の声を上げ、猛然と席を立って帰ったのがジョン・フォードだった。

 さて、次はワイルダーの「麗しのサブリナ」(^^)


ポスター 映画 ローマの休日 オードリー・ヘプバーン B3サイズ FI01


 

by broncobilly | 2017-08-10 09:34 | 映画メモ
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