おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30
最新号
https://www.amazon.co.jp/キネマ旬報-2018年11月上旬特別号-No-1793/dp/B07HSLVBTN/ref=sr_1_3/357-6990759-6652933?s=books&ie=UTF8&qid=1540598296&sr=1-3&refinements=p_lbr_one_browse-bin%3Aキネマ旬報
外部リンク
最新の記事
以前の記事
検索
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧

「ディストピア パンドラの少女」(The Girl with All the Gifts, 16)

 多くの人間がゾンビ化したらしい近未来。軍事施設に隔離され実験材料とされている特別な子どもたちの一人メラニー(セニア・ナニュア)を単なる実験材料としてみることができず苦悩する教師ヘレン(ジェマ・アータートン)、対照的にワクチン開発のためには子どもたちの命を奪うことも躊躇しないコールドウェル博士(グレン・クローズ)。施設の壁を破ってゾンビたちが侵入してきたため、メラニー、ヘレン、コールドウェル博士は、パークス軍曹(バディ・コンシダイン)と少数の部下たちと共に逃避行に出る。

 色々とはっきりしない設定が、薄紙を剥がすように明らかになっていく前半の語り口がよい。かなり鮮烈な描写もあるのだが、高性能の重火器VS.ゾンビという構図は散々見せられているので、さすがにこちらも食傷気味である。

 それでも新人ナニュアの達者で活き活きとした演技と、ぼくのご贔屓のアータートン(化粧気がなくても魅力的)の交流には胸を打つものがあるので、画面から目が離せない。

 ぐっと面白くなるのは脱出行が始まってからで、ゾンビ映画の定番をしっかりと守りながら、ホラーよりもSFの要素が強まり出すのである。

 ゾンビ誕生の原因と、人間に代わる地球の新たな覇者の誕生とが示唆されるあたりはワクワクする。

 コーム・マッカーシーの演出も、施設を出てからの方が神話的な神秘性が画面に横溢するようになって魅力が増す。

 ちょっと『蠅の王』みたいになっていくところもおもしろい。

 一つ残念なのはコールドウェル博士のキャラクターで、子どもたちの命を奪うことを躊躇しない冷酷さ、自分のの命と引き替えにしてにでも人類を救うワクチンを開発したいという高潔さの二つの側面を、さすがにクローズはがっちりと演じているのだが、描き込み方が足りないので単なる悪役になってしまっている。このキャラがもう少し深ければ、さらに良い作品になっていたはず。

 しかし、そんな不満も吹き飛んでしまうのが素晴らしい結末部分で、パンドラの箱が開き、文明が滅んでしまっても、'次の存在'に人類の記憶と知恵が受け継がれていくであろうという'希望'が見事な画になっている。

 ゾンビ映画としては異色。SF映画としては案外ストレート。どちらにしても楽しめた。

e0160746_12403076.jpg
 


by broncobilly | 2017-09-07 12:40 | 映画評
<< 「ジェーン・ドウの解剖」(Th... 「アトミック・ブロンド」(At... >>