おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「ブラック・ミラー: サン・ジュニペロ」+「ヒットマンズ・ボディガード」

 後期が始まっているけれど、祝日で講義がないので午前中はずっとエミー賞授賞式を観ていた。

 最初から最後まで、トランプ大統領への、と言うか、トランプに代表されるアメリカの保守化に対抗したような内容になっていて、「多様性」を前面に押し出したり、フェミニズム的な色彩も強かった。「九時から五時まで」を封切りで観て爆笑したオールド・ファンとしては、ジェーン・フォンダ、リリー・トムリン、ドリー・パートンがそろい踏みして「私たちは80年のあの作品で、低劣な性差別主義者と闘った。2017年の今でも闘っている」とトランプに喧嘩を売ったのが、今日のハイライトであった。

 最優秀ドラマ・シリーズ賞を受賞したのが、前評判の高かった「ストレンジャー・シングス」ではなく「侍女の物語」(マーガレット・アトウッドが登壇したのには驚いた)だったのも、現在のアメリカ社会の流れに対して、リベラルなショービズ界がフェミニズムの立場から反撃した結果のようにも思える。
 ノスタルジーよりも現在の戦い。

 最優秀テレビ・ムービー賞を受賞した「サン・ジュニペロ」がNETFLIXで観られるので、早速チェックしてみた。でもこれ、「ブラック・ミラー」っていうオムニバス・シリーズの1エピソードだけど、テレビ・ムービー扱いでいいのかねえ。「シャーロック」の1エピソードも、この部門にノミネートされていたし、よくわかりません。

 それはともかく、観てみたら、いきなり設定が1987年で、「ロストボーイ」の看板は映るわ。マックス・ヘッドルームは登場するわで、「おいおい、ノスタルジーじゃん! だったら「ストレンジャー・シングス」でいいじゃん!」と突っ込んでしまったのだが、続きを見ているうちに納得した。

 これねえ、何を書いてもネタバレになるので、何も書けません。

 ただし、受賞も納得の素晴らしい出来で、SFの傑作であり、ロマンスの傑作であり、しかも切実な社会的テーマも反映されている。

 そしてなによりも、「侍女の物語」同様に、現在の保守的な流れに'多様性'の立場から異議を唱える力強い物語になっていた。

 ほかのエピソードもチェックしなくては。

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 その前にやはりNETFLIXで「ヒットマンズ・ボディガード」をチェックしたのだが、しかし、オソロシイ時代になった。三週連続全米興収No.1で、現時点でもトップ10圏以内にいる作品が、劇場ではなくiPadで合法的に観られてしまうのだから。画面は小さいが、BOSEのブルートゥース・スピーカーに音を飛ばせば、とりあえず気分は出る。

 ライアン・レイノルズ扮するプロのボディガードが、国際裁判所で裁かれる独裁者ゲイリー・オールドマンの悪行を証言させるために、因縁のある殺し屋サミュエル・L・ジャクソンを護衛しなくてはならなくなる。

 ほんとうはインターポールが護衛しなければならないのだが、内通者がいるので刺客が引きも切らないのである。インターポールのエライ人を演じているのがホアキン・デ・アルメイダなので、内通者が誰なのかは犬とか猫にでもすぐにわかるだろう。劇中でもすぐにも正体を明かしている。

 このことからもわかるように、ストーリーの面白さや捻りよりは、レイノルズとジャクソンの漫才的掛け合いと、派手なアクションのつるべ打ちで一気に見せてしまおうという作品。その意味ではとても楽しませてくれる。

 最近脇役が多かったジャクソンが魅力全開で大暴れ。レイノルズは受けに廻る芝居ながら、身体能力全開で、長廻しの格闘場面も見事にこなしている。

 「エクスペンダブルズ3」の時は、レイティングを下げるために会社側からバイオレンス描写を抑えるように命じられていたパトリック・ヒューズが監督。「ランボー 最後の戦場」はバイオレンス描写が過激すぎて想定したほどヒットしなかったと考えたミレニアムのエライ人が、「エクスペンダブルズ3」の描写を温和しめにするように命じたのだ。公開前にネットに全編が流出したこともあり、「エクスペンダブルズ3」は興行的に振るわず、スタローンは、バイオレンスを強めていればもっとヒットしたはずだ、とあとで愚痴った。

 ミレニアムのエライ人、またまた考え直したのだろう、「ヒットマンズ・ボディガード」は振り切ってます。でも、ユーモアが先行しているので(それほど)不快なところはない。

 ひたすら大規模で派手な格闘、カーチェイス、爆発などは、「ジョン・ウィック」や「アトミック・ブロンド」で食傷気味になっていないこともないこともないこともないのだが、「ジョン・ウィック2」のローマや「アトミック・ブロンド」の壁崩壊直前のベルリンのように、アクションの背景がヨーロッパだと、アメリカが舞台(まあ、だいたいカナダで撮っているわけだが)なのとはまた違った味がある。アムステルダム運河でのスピードボート・チェイスなんかはやっばり面白い。

 ヒューズ監督の感覚も今回は生かされていて、ヘリコプター爆発からジャクソンの立ち姿に繋ぐあたりなど、構図の感覚で見せる。

 サルマ・ハエックが演じるジャクソンの妻も面白かったし、大いに楽しんだのだが…。

 やっぱり最初は劇場で観たかったよ。
 
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  「キネマ旬報」最新号明日発売。連載は日本SF大会でのピーター・トライアスさんのこと。「ドリーム」特集で作品評も書きました。







by broncobilly | 2017-09-18 17:58 | 映画評
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