おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
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「バリー・シール/アメリカをはめた男」(American Made, 17)

 洋画の邦題が作品の中身を正確に反映していないというのはけっして珍しいことではないが「バリー・シール/アメリカをはめた男」という邦題は、近来まれに見る清々しいほどのサギである。

 実在の主人公は、CIAの手先として現金や武器を中米の国々に運び、成り行きからカルテルのために麻薬を運んで巨万の富を得ることになる。しかし、はめられているのは徹頭徹尾、バリー・シールという男なのである。CIAにはめられていると言ってもいいし、彼自身の'アメリカン・ドリーム'というやつに躍らされていると言ってもいい。そこから「面白うて、やがて哀しき」という、この映画の良さが生じてくる。やっぱり「アメリカン・メイド」という原題が相応しい。

 その意味で、この実は空っぽな悲喜劇をトム・クルーズ演じさせたのはまこと絶妙と言えよう。例えば今回のハーベイ・ワインスタインのスキャンダルに関しても何もコメントせず、またコメントすることも求められていないスーパースターであるあたりにも、虚像としてのイメージだけを要求されるクルーズという俳優のユニークさがわかるわけだが、バタバタと動きまわり、いくら物質的に豊かになっても満たされることのない、バリー・シールという男の内面にぽっかりと空いた底なしの穴を、クルーズは見事に表現しえている。地なのではないかという気がひしひしとするが

 ゲイリー・スピネッリのシナリオもダグ・リーマンの演出も実に快調。旅客機のパイロット時代の主人公が、仕事中にちょっとした悪戯をするエピソードをさらりと挿入することで、主人公の満たされない内面と無鉄砲ぷりを観客に伝えてしまうあたりは特に巧みである。
 主人公の妻を演じるサラ・ライト・オルセンは、リース・ウィザースプーンをちょっと崩したような容姿と個性で、ゴージャスすぎないところが役柄と合っている。

 カーター政権時代とレーガン政権時代が背景なのだが、ブッシュやクリントンも何気なく登場して、アメリカの裏現代史の面白さもあり。

 この作品で特に気に入ったのは、ラストでも出るになった人物の写真や、現在の姿を出さないことである。あれは卑怯だと思うんだよね。結局ラストで、「これは実話なんだから納得しろ。感動しろ」と物語の作り手が責任放棄しているみたいで。
 実はクルーズとリーマンが以前組んだ「オール・ユー・ニード・イズ・キル」は、あまり好きではないのだけれど、この作品は徹頭徹尾楽しめた。快作だと思う。


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by broncobilly | 2017-10-27 16:51 | 映画評
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