おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「オリエント急行殺人事件」(Murder on the Orient Express, 17)

 ぼくはシドニー・ルメット監督の74年版「オリエント急行殺人事件」が大好きで、何度も観ている。昨年も「新・午前十時の映画祭」で久々にスクリーンで鑑賞し、やはり心の底から楽しんだ。

 だからと言って最新版に最初から否定的に向き合うのは間違っている。ルメット版の出来がとびきりいいだけに、同じことをやるわけにはいない。違う方向性を目指さなければならないということは十分に理解できる。ルメット版とは、ここが違うからダメだ!と頭ごなしに否定してかかるのはフェアではない。

 わかっているのだ。わかってはいるのだが…。

 ブラナーのポワロがやたらと元気で、「軍用列車」のチャールズ・ブロンソンみたいなアクションを披露するのもよしとしよう。

 殺人、復讐というテーマを、敢えてライトに、華麗に、明るいタッチで描いたルメット版とは真逆に、罪と罰というテーマを重々しく深めたのも納得できる。好きとは言えなくても、納得はできる。

 ただ、これをいっては身も蓋もないのだが、ブラナーの芝居がダメだった(*個人の感想です)。

 ごめんなさい。やっぱり比較しちゃいます。

 ルメット版ポワロのアルバート・フィニーは怪演技を楽しそうに披露しながらも、豪華なキャストの一人一人と同等に向き合っていた。だから、フィニーvs.コネリー、フィニーvs.バーグマンetc.と、乗客一人一人に尋問する場面、そしてリチャード・ウィドマークと対峙する場面が、なんというか、ボクシングの試合を観るような、猛者対猛者の対決という感じで、オールスター・キャスト一人一人の演技をじっくりと楽しむことができたのだ。撮影に入る前にシナリオの読み合わせを徹底的に行う、ルメットのスタイルも、役者同士の息の合い方に影響していたと思う。

 ところがブラナー版だと、とにかくポアロが中心、ブラナーが気持ちよさそうに延々と芝居しているのだけが目立つ。他の出演者たちを立てようとか、ここは敢えて一歩引いて支えようとかいう様子がみじんも見えないのである。

 他の出演者たちが皆、ブラナーの引き立て役になってしまっている。だからせっかく力のある役者をずらりと揃えても、相互の化学作用による+αの愉しさが生まれていないのだ。

 というわけで、ここで泣け!とばかりの見せ場でも、なんだかちょっと冷めてしまった。ルメット版で乗客たちが乾杯を交わすところは、何度観ても泣いてしまうのだが。

 ルメット版では謎解きの場面でも、容疑者一人一人のリアクションを丁寧に、そして巧みに拾っていて、また各人がいい芝居をしているのである。
 新版で容疑者全員がトンネル内にしつらえたテーブルに「最後の晩餐」よろしく鎮座しているのには、一瞬ギャグかと思ったが(マジだった)、ブラナー/ポアロは、この人たちの前で'名探偵の苦悩'をたっぷりと演じるのである。もちろんリアクション・ショットもあるのだが雑。あくまでブラナーありきの演出だ。

 「ダンケルク」では抑えた感じでいい雰囲気だったが、きっとクリストファー・ノーラン監督が、うまくコントロールしたのだろう。「オリエント急行殺人事件」の監督は…、あっ、本人か。


 次は「ナイル殺人事件」なんですか? ポアロか監督か、どっちか替えてください。
 

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by broncobilly | 2017-12-09 21:48 | 映画評
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