おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
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「アウトサイダー」(The Outsider, 18)

 矢継ぎ早に新作'映画'を繰り出してくるNETFILX。ダンカン・ジョーンズの「mute ミュート」は、なんだかザンネンな感じの作品だったが、「アウトサイダー」の方は、日本人としてはイロイロな意味で興味深いシロモノではあった。 

五〇年代の大阪。刑務所内でヤクザの幹部、浅野忠信の命を救った縁でジャレッド・レトは浅野の仕事を手伝うようになる。もう一人の大幹部である椎名桔平に反発されながらも、浅野の妹、忽那汐里と愛し合うようになり、組長の田中珉にも目をかけられて盃を交わす。
 
  脚本のアンドリュー・ボールドウィンは、相当のヤクザ映画ファンなのか、あるいはかなり勉強した模様。75年の「ザ・ヤクザ」は同じ東映でもヤクザ映画というよりは任侠映画へのオマージュになっていたが、今回特に序盤から中盤にかけては「仁義なき戦い」以降の東映ヤクザ映画の影響大。 

オープニングの刑務所内の場面は、日本人の囚人たちの中に長髪とヒゲのアメリカ人がぽつんと混じっていることに違和感があるのだが、看守長役で菅田俊がちらりと出てくると、一気にそれらしい雰囲気になる。恐るべし菅田俊。 その後は、日本人の目からみてもそれほど違和感を感じる場面はない(制服警官たちがヤクザの経営している店に押しかけて灯油をまいて放火、というのはいかがなものかと思ったが)。古い建物も探しているし、オート三輪なども走っていて気分が出ている。 

指詰めの場面なども、きっちり撮っていて、ちょっとぶつぶつ切りすぎだろうと思ったが、まあ欧米の観客(視聴者?)のために、このあたりを丁寧に撮るのもわかる。 

 時おり凄まじい凶暴性を発揮し、異国でギャングになろうとする主人公のバックストーリーが最初のうちは、まったく語られず(物語の後半で、主人公が元軍人で過去になにやらとんでもないトラブルを起こしたことは示唆される)、レトもほぼ無表情で通すので、主人公に感情移入しにくいのが難点。 

 「仁義なき戦い」だったのが、敵対する大森南朋組長たちと対決するところでは、皆が黒のスーツをびしっと着こなしていて(五〇年代の大阪のヤクザはぜったいこんなではなかった、と思う)、むしろ北野武の「アウトレイジ」みたいになる。これも観てるな、脚本家とマーチン・サントフリート監督。 

 そして、レトが大森の組に殴り込むクライマックスは、ああやっぱり任侠ものなのね、という感じで、なんだかとっちらかってくる。レト新組長誕生を示唆するラストに至って、ああ、これは「タイ・バン」とか「SHOGUN 将軍」みたいな、「どんな文化、組織においてもリーダーシップを執るのはアメリカ(西洋)人」という典型の物語だったんだなあ、と納得することに。 

 日本の俳優たちは皆健闘しているが、田中珉がさすがの存在感で抜きんでている。 

 日本人としては、一見の価値のある珍品ではある。  
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by broncobilly | 2018-03-12 08:56 | 映画評
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