おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
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「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」(The Post, 17)

 ベトナム戦争に勝利することはあり得ないという分析結果が書かれた'ペンタゴン・ペーパーズ'。歴代政権が隠し続けた最高機密文書が権力側からの圧力をはねのけて公開に踏み切ったワシントン・ポスト紙の英断を、ブラッドリー編集主幹(トム・ハンクス)と社主であるキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)の姿を中心に描く。 

 リアルタイムの政治状況(はっきり書くとトランプ政権)へのプロテストであることを明確にするため、スティーヴン・スピルバーグは異例の短さでこの作品を完成させた。そのことがシリアスな題材の作品に、いい意味での'軽さ'を与えている。ハリウッド・プログラム・ピクチャーの一ジャンルである'記者もの'の伝統が息づいている。もっとも、伝統的'記者もの'のキメ台詞は「輪転機を止めろ!」(「ザ・ペーパー」でランディ・クエイドがマイケル・キートンに「この台詞を言わせてくれ」と懇願していましたね)なのに対して、この作品では「輪転機を動かせ!」だが。 

 個人的な理由があって年に一度「カラー・パープル」を観返しているのだが、昔のスピルバーグは、巧すぎて鼻持ちならないところがあるなあ、とそのたびに思う。エンタテインメントだといいのだが、シリアスな作品でこれをやられると、「いや、むしろ、そのサービス精神は邪魔だから」と思ったりもした。あの「シンドラーのリスト」にさえ、そんな部分がある。「ミュンヘン」が転機になるのかなと思ったら、「戦火の馬」がまた空虚なテクニック尽くしでうんざりさせられたのだが、「リンカーン」、「ブリッジ・オブ・スパイ」が、テクニックをひけらかさず、しかし、実は'裏'で駆使する手法で、いよいよ巨匠の風格を感じさせた。今回は、それとはまた違った軽味が好ましい。 

 がっちりやれば長尺になる話を、撮影期間短縮の目的もあったのかもしれないが、シナリオ的にもかなり端折っている。終盤で法廷劇をやって、もう一盛り上がり作れるところも、あっさりと省略している。 ハンクスもストリープも、いくらでも力演できる人たちだが、さらりと、でも手は抜かずに演じている。「報道の自由」の大切さを訴えるのも、あまりに正面切って、大熱演されるとかえって白々しくなるので、このくらいが最も効果的。 

 助演陣もみな達者だが、今回はマクナマラを演じるブルース・グリーンウッドが巧いなあ、と思った。しょっちゅう顔を見る人だが、最近の演技には脂がのっている。「ジェラルドのゲーム」もよかった。そう言えば「キングスマン/ゴールデン・サークル」では、明らかにトランプをモデルにした大統領の役だったな。 

 そのまま「大統領の陰謀」に続いていく話だが、かの作品だけでなく「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元国防長官の告白」を観ればさらに興味深いはず。書籍ならデヴィッド・ハルバースタムの『メディアの権力』。 とても楽しかった。社会派の映画を楽しんではいけないということはあるまい。楽しい映画の方がメッセージが広く、明快に伝わることもあるはずなのだから。 

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by broncobilly | 2018-03-31 16:06
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