おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
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「オペレーション・フィナーレ」(Operation Finale, 18)

 ベン・キングスレーという人は、何度も結婚と離婚を繰り返していて、別れた元奥さんたちへ支払う慰謝料の額が莫大だという記事を読んだことがある。そのせいか、吃驚するほど安っぽい作品にも頻繁に出演して、そんな時はやっつけ仕事の演技をしている。そのため、彼がどれほど優れた俳優なのかということを、ついつい忘れてしまいそうになるのだが、ちゃんとした作品で熱演しているときには、ああ、やっぱりキングスレーは凄いなあ、と改めて感心したり、感動したりする。
 「オペレーション・フィナーレ」を観て、久々にキングスレーの巧さと凄さに唸った。

 ナチス崩壊後、アルゼンチンに潜伏していた‘ホロコーストの実行人’アイヒマンを捕らえ、国外に連れ出したモサド諜報員(オスカー・アイザック、メラニー・ロラン)らの作戦を描く「オペレーション・フィナーレ」、って、これ、ついこの間、全米で公開されて、そこそこヒットしたし、評判も良かった映画じゃん!
こんなのが、いきなり配信されるからNetflixは止められない。

 監督はクリス・ワイツ。「ライラの冒険」や「ニュー・ムーン/トワイライト・サーガ」などの、ふにゃけたファンタジーを撮ったときとは打って変わって、じっくりと落ち着いた演出でサスペンスを盛り上げていく。爆発や銃撃戦などの派手な見せ場があるわけではないのに、淡々とした演出だからこその静かな緊迫感が見事である

 そして、やはり見事なのがキングスレー。囚われの身となりながら貫禄を失わず、捕らえた側を圧倒していく存在感が画面を満たす。この作品の製作を兼ねるアイザックが、キングスレーの演技をがっちりと受け止める。この二人が対峙するいくつかの場面は、特に見応えがある。

 この作品は当然、アイヒマンを美化などしていないわけだが、特に憎々しい悪魔として描いているわけでもない。家族に対しては良き父、良き夫として、描いている。実際そうだったのだろう。
 愛情深き父、夫であっても、同時に悪魔になりうる。そしてアルゼンチンでアイヒマンを護り、ナチス再興を夢み、ユダヤ人たちへの憎しみをぶつけるドイツ人たちとて、自分たちの思想や信条、そして異民族への憎しみはまったく正当なものだと思っている。そのことが伝わってくるから、この作品はとても恐ろしい。

 と同時に、今のような時代だからこそ作られるべきであった、今のような時代にこそ観ておくべき作品だとも思う。

*ピーター・ストラウスが小さな役で出演していて驚いたよ。

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by broncobilly | 2018-10-06 09:24 | 映画評
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