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映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「バスターのバラード」(The Ballad of Buster Scruggs, 18)

 コーエン兄弟の新作は六つのセグメントからなる西部劇アンソロジー。
 コーエン兄弟の作品を観てがっかりさせられたことは一度もない(あっ、一度だけある「レディ・キラーズ」)ので、この作品にも期待していたのだが、期待を遙かに上回る出来。コーエン兄弟作品には最初から、相当ハードルを上げて対峙することになるのだが、楽々と越えられてしまいました、ハードル。

 大学生だった頃には、新潮文庫から出ていたフォークナー、ヘミングウェイ、スタインベック、オコナー、カポーティら、アメリカ文学の巨星たちの短編集を片っ端ら読んだものだが、「バスターのバラード」を観終わったとき感じたのは、傑作揃いの、しかし内容的にはバラエティに富んだ、出来の良い短編集を読み終わった満足感だった。

 喜劇的なものから、シュールなもの、本格西部劇、不気味なもの、胸を打つもの、それぞれのセグメントは上記すべての要素を持ちながら、そのうちの一つが特に強調されているので、多彩でありながら、統一感もある。
 そしてすべてのエピソードを「死」という一本の線が貫いている。

 Fresh Airでのインタビューによると、これはコーエン兄弟が初めて全編デジタル・カメラを使って撮影した作品で、デジタルの素材は最終的に画像を調節するので、撮影したラッシュを、毎晩その日のうちに確認する作業は止めてしまったのだという。デジタル撮影とコーエン兄弟は素晴らしい出逢いを果たしたといっていい。第一話「バスターのバラード」での、「ビッグ・リボウスキ」を想起させる飛翔のイメージや、最後の挿話「遺骸」での不気味な色使いも素晴らしいが、最終エピソード以外を除くすべてのエピソードに、西部の大自然(ロケ地はニューメキシコ)が完璧な構図で、そのまま額に入れた飾っておきたいような「画」となって、満ちあふれている。特に「金の谷」で人間同士の欲望と血にまみれた戦いをサンドウィッチのように挟む動物たちの姿は感動的だ。
 Netflixで配信されたものをPCやタブレットではなく、それほど小さくはないテレビモニターで観たのだが、これは劇場のスクリーンで観たかったなあ、と何度もため息が出た。

 「早とちりの娘」での幌馬車隊案内人と先住民たちとの戦いの場面に関しては、西部劇において、これほど本格的で迫力のある戦いが描かれたのは本当に久し振りと言っていいのではないかと思う。

 出演者たちは皆、個性派で好演しているのだが、「早とちりの娘」ゾーイ・カザンのユニークな個性とおずおずとした演技が心に残る。鼻のあたりがお祖父さんのエリア・カザンによく似ている。
 個人的には「遺骸」で、ソウル・ルビネック(「許されざる者」)、タイン・デイリー(「ダーティ・ハリー3」)、チェルシー・ロス(「人生の特等席」)が横一列になって駅馬車の中に鎮座ましましているのがツボだった。

 劇場公開されていれば、間違いなく今年のベスト・テンに入れたかった、いや、ベスト・ワンにしたであろう作品。

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by broncobilly | 2018-11-24 14:55 | 映画評
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