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映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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「ミスター・ガラス」(Glass, 19)

 「アンブレイカブル」、「スプリット」の続編。自らをスーパーパワーの持ち主だと信じる三人(ブルース・ウィリス、ジェームズ・マカヴォイ、サミュエル・L・ジャクソン)を'治療'しようと女医サラ・ポールソンがフィラデルフィアの精神療養施設に集める。だが、彼らのスーパーパワーは本当に妄想なのか?

まず、M・ナイト・シャマランのトレードマークになっている(実は、ある時期以降はそうではないのだが)どんでん返しに過度な期待はしないように。いくつかのツイストは用意されているものの、サスペンス/ミステリ映画にしばしば登場する程度のものだから。

「ミスター・ガラス」という作品の面白さは、ツイストにあるのではない。シャマラン独特の画面作り、演出のリズム、そして世界観にある。

スーパー・ヒーロー・コミックの内容は現実の世界の記憶であり記録なのだ、という「アンブレイカブル」のテーマが、当然この作品でも敷衍されているわけだが、それが更に進化し、深化している。

(映画という物語の世界の中での)現実で、テレビで「バットマン」(アダム・ウエスト版)で流れているという以外にも、シャマランは様々な仕掛けを施して、「ミスター・ガラス」作品世界の中で空想とされるもの、観客であるぼくたちが空想であると考えるもの、現実であると考えるものの境目を曖昧にしていく。いくつもの'世界'で繰り広げられる'物語'が幾重にも重なって、互いに浸食していく。

ジャクソン(ニック・フューリー)とマカヴォイ(プロフェッサーX)が対峙する場面でジャクソンが'avenge'という言葉を口にするのは、意図的なものだろうし、物語の大きな要素となる超高層ビルの名前が'オオサカ・タワー'となぜか和風なのは、'スーパー・ヒーロー'、ジョン・マクレーンが大暴れした'ナカトミ・ビル'を意識しているのだろう。'オオサカ・タワー'が表紙になっている雑誌には'True
Marvel'という文字が躍っている。

出演俳優たちが別の'宇宙で'体現してきた(アニヤ・テイラー=ジョイは近々「Xメン」に参加予定)スーパーヒーローたちの神話が融合して、「神話を信じろ」という(「レディ・イン・ザ・ウォーター」の中で明快に発信されていた)シャマランのメッセージが観客にまた突きつけられる。ジョゼフ・キャンベルは、すべての人が'英雄の旅'を生きられると訴えた。シャマランは、すべての人が'スーパーヒーロー'に成れると語りかけてくる。

ただし、シャマランは、ぼくたち観客の一人一人が空を飛べるとか、不死身になれるとか、変身できると言っているわけではない。それはあくまでメタファーであって、自分の可能性を信じろ、と言っているのである。そして、可能性の芽を摘み取ろうとする大きな力があるなら、それに抗え、と言っているのだ。

「スブリット」のラストで、「アンブレイカブル」の物語が続いているのを知ったときの驚き、喜び、そして次の作品への大きな期待が裏切られることはなかった。

「ミスター・ガラス」(Glass, 19)_e0160746_16463746.jpeg



by broncobilly | 2019-01-19 16:47 | 映画評
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