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映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
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3:10 to Yuma (07)

 明けまして、おめでとうございます。静岡の劇場で公開中の観たい作品は旧年中に観てしまい、元旦(映画の日)は、「WALL・E」にもう一度行くつもりです。と、これだけではなんなので、今回と次回は、日本公開が待ちきれなくてDVDを輸入。面白かったので劇場公開されたらもう一度ちゃんと劇場で観ようと思いつつ、けっきょく公開もソフト発売もないぞ! どうなってるんだ!?という作品に関する文章をアップします。今日は 3:10 to Yuma であります。

 「3:10 to Yuma」

 「決断の三時十分」(57)のリメイク。ラッセル・クロウ扮する無法者の護送を、生活に困窮した牛飼いクリスチャン・ベイルが引き受け、クロウ奪還を狙う手下たちとの間に緊迫した場面が続く。上映時間九十二分のオリジナル板はやはりデルマー・デイヴィスとグレン・フォードがコンビを組んだ「去り行く男」(55)などと同様ぴりっとしたテイストがうれしい小品だったが、今回のリメイク版は三十分ほど尺が伸びた分だけ、キャラクターの背景描写とアクション場面をたっぷりと増やして大作西部劇に仕上がっている。オリジナル版とは幾分テイストが変わってはいるが、これはこれで見事な出来である。
 現金輸送馬車をクロウの一味が襲撃する序盤の一幕からジェームズ・マンゴールド監督はきびきびとした演出で見せてくれる。ひょんなことからクロウ捕縛の手柄を立てたベイルが、クロウ移送の一行に加わり、成り行き上自宅で皆に食事を振る舞う場面はオリジナル版でもグレン・フォードが色悪の魅力を振りまく見せ場になっていたが、今回もクロウが気持ちよさそうに演じている。この作品でのクロウはオリジナル版のフォード同様、ふてぶてしい悪の魅力と同時にふと見せる繊細さが見せ所。あくまで実直、常に思い詰めた表情のベイルと好一対になってて、二人の間に友情が生まれていく過程も自然に描かれている。
 クロウの逮捕に執念を燃やす老バウンティ・ハンターがピーター・フォンダ。八十年代以降の西部劇には黄金時代の西部劇スターをゲスト出演させて気分を出すのがお約束みたいになっていたが、もはやヘンリーならぬピーターがオールド西部劇の残り香を醸し出す存在として引っ張り出されるというの事実には感慨深いものがある。
 トンネル工事現場でのどんぱち(ここで中堅人気スターがゲスト出演)を経て、駅のある町に着き、列車を待っている間に無法者たちに取り囲まれる心理戦の部分はオリジナルでは少しばかりだれる部分だったが、今回は工夫を凝らして飽きさせない。
 さて、いよいよほぼ孤立無援となったベイルがクロウを列車に乗せるために奮闘する見せ場となるわけだが、このあたりはマンゴールド監督、血なまぐさい描写を交えながら延々と撮っている。これは作品全体について言えることなのだが、ストーリーとしては伝統的な西部劇の"けれん"を大切にしながら、描写はリアルに徹することで現代の観客が観ても納得し、引き込まれるクライマックスとなっているのである。
 洒落た人情噺として幕を閉じたオリジナルだが、こちらはさらに一ひねり。この処理には賛否両論あるだろうが、これまでリアルなタッチでやってきたのだから、こうするしかないだろう。グレン・フォードは一つの決断を迫られたが、ラッセル・クロウは二つの決断を下すのだ。
 K・コスナーの「ワイルド・レンジ」以来久々に本物の西部劇を観たというどっしりとした満足感が残った。


映画・ドラマ

by broncobilly | 2009-01-01 07:39 | 映画評
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