おにがしま


映画批評家      鬼塚大輔      による映画評その他なんだかんだブログであります。
by broncobilly
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「007/慰めの報酬」Quantum of Solace(08)

 先に公開された欧米での評価は今ひとつ、アメリカでの興行収入は期待をやや下回る、ということから、あまりがっかりしないように期待値を少々下げて見物に出かけたせいか、十分に楽しむことができた。
 まず第一に前作「カジノ・ロワイヤル」の出来が良すぎたのだということを忘れてはいけないと思う。その前の「ダイ・アナザー・デイ」(個人的にはシリーズ中最悪だと思う作品)を思い出せば「慰めの報酬」レベルの作品を見せてもらえれば御の字である。
 シリーズ最短の上映時間内に、たっぷりとアクションの見せ場を詰め込んでいるために、少々せわしなく、また平板な感じになってしまったことは否めない。それでもM(ジュディ・デンチ)の出番がこれまでよりも増えていて、彼女の貫禄だけで、ドラマ性の部分はかなり補われている。前作からの直接の続編というシリーズ初の試みも成功していている。ボンドが機上で眠れぬままにカクテルを何杯も呷る場面で、前作でボンドがこのカクテルに"ヴェスパー"と名付けていたことが説明されないあたり、一見さんお断り、という感じだが、わざとらしい説明科白が入るよりずっといい。
 第2班監督にダン・ブラッドリーが起用されたことで、アクション・シークエンスがジェーソン・ボーン三部作のようになるのでは、と期待も心配もされていたが、実際に観てみるとボーン風のリアルさを取り入れながらも、ボンド風の外連もちゃんと入っている。二つの要素を統合しようという試みは、古くからのファンには嬉しい。
 嬉しかったといえばクライマックス。砂漠のホテルの爆発炎上が、シリーズのお約束でありながら、前作では見せてくれなかった"悪の秘密基地大爆発"の感覚で作られていたこともそう。"リアリティ重視"と"秘密基地大爆発"はなかなか並立しがたそうで、「ダイ・アナザー・デイ」での"氷のホテル"はアホらしかったし、「ワールド・イズ・ノット・イナッフ」では潜水艦、「トゥモロー・ネバー・ダイズ」では特殊戦闘艇の爆発が半端な代替となっていた。今回は炎の中での格闘、銃撃をたっぷりと見せてくれてありがたいです。炎を恐れるカミーユ(オルガ・キュリレンコ)が子どもに返り、身を縮めてボンドに抱きかかえられるところは、前作でのシャワー・ルームの場面と同じ構図だったりするあたり芸が細かい。アクションのつるべ打ちの中に効率的なドラマを絡めていこうという意図が、この作品では成功していると思う。
 シリーズの昔からのファンなので、評価が相当甘くなっていることは自分でもわかっているのだが、「カジノ・ロワイヤル」で成功した要素を壊すことなく次につなげたことは素直に評価したいと思う。
 マーク・フォスター監督は、マティスの死などドラマ部分が巧いのは当然として、アクション場面でも、競馬やオペラを激しいアクションとカットバックで見せるなど、観客を飽きさせないように工夫している。
 それにしても、今回もまったく話終わってませんね。あの人は逃げたままですね。ついに名が明らかとなった巨大組織"クォンタム"は、次の作品でも敵なのかなあ、次のボスも大ボスの手先に過ぎないのかなあ、そのうちに大ボスが姿を現すのかなあ、などと昔日の"スペクター"、"エルンスト・スタブロ・ブロフェルド"を思い出して、今からわくわくしている今日この頃であります。いつもなら、次の準備が始まっているはずなのに、「経済危機の影響でなにも動いてないよ」などとダニエル・クレイグは言っているらしい。なんとかきっちり2年後には、続きを見せて欲しいです。
映画・ドラマ

by broncobilly | 2009-01-25 16:30 | 映画評
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